加奈子と里奈(1)
加奈子は、4月から、都内で大学生となる。
住む家は、祖父である大旦那のお屋敷。
お屋敷の中で、加奈子が使う部屋の改修や家具などの細かい確認のために、明日、上京する予定。
しかし、加奈子には、もう一つ目的がある。
史の彼女の里奈と話をしたいというもの。
もちろん、都内の音大受験に失敗して京都に残る愛華の話は出さない。
まず、里奈の「人となり」を、自分でも理解したかったのである。
「由紀ちゃん、マスター、清さん、涼子さん、大旦那、奥様、華蓮ちゃん、道彦さん、亜美さんも里奈ちゃんをお気に入り」
「カフェ・ルミエールの洋子さんも奈津美ちゃんも結衣ちゃんも彩ちゃんも、美幸さんも、史君の彼女は里奈ちゃんしか、つとまらないって言っている」
「そうなると、悪いけれど、愛華ちゃんの目はない」
「将来、親戚になるかもしれない里奈ちゃんとお話をしてみたい」
加奈子は、そう思って、史に「明日、大旦那のお屋敷に行くけれど、里奈ちゃんとも逢いたい」と、昨日、連絡した。
あれこれと「変な気を回す」由紀には、言わない。
とにかく、由紀が話の中に入ると、混乱すると思う。
それは、かつての愛華と一緒の音大見学で、思い知った。
史の返事も簡単だった。
「わかりました、里奈ちゃんには連絡して見ます」
加奈子が、史からの連絡を待っていると、すぐに
「里奈ちゃんも、加奈子ちゃんに逢いたいって」
「姉貴を気にしていたけれど、いいの?」
加奈子は、そこで少し迷った。
「そう言えば、由紀ちゃんが言っていた」
「里奈ちゃんは、史君とデートすると、必ず由紀ちゃんにお土産を買ってくるって」
「由紀ちゃんは、可愛い妹が出来たって、喜んでいたなあ」
「気配りがいいのかなあ」
そして史に、
「後で困るかなあ、私、由紀ちゃん好きだけど、いると話が混乱するから、それも不安なの」
と素直に言う。
史は、少し考えて、
「じゃあ、姉貴には僕から言うよ」
「心配しないで」
と、言い切った。
加奈子は、少し不安だったけれど、それ以上は言いようがなかった。




