華蓮の悩み
華蓮は、悩んでいる。
仕事ではなく、彼氏ができないこと。
それほど急ぐ話ではないけれど、誰もデートしてくれないのは寂しい。
史は、可愛いけれど遠縁、里奈という立派な彼女がいるし、何より年下過ぎる。
戯れに誘えばOKくれるけれど、あくまでも食事のお供。
その上、それを聞きつけて由紀や加奈子が、お相伴を申し出て来る。
結婚した道彦を誘うのも変だ。
たとえ遠縁といっても、節度が必要、あくまでも亜美も一緒でないとよくない。
清については、由紀と同じ、子供の頃から憧れていたけれど、年の差もある。
その意味において、実は由紀と清は、まとまらない、つまり「由紀が憧れているだけで、清は由紀を選ばない」と思っている。
ただ、由紀には、まだそれを言う段階ではないと思う。
そこまで思って、また自分に戻る。
「他人のことはいいの、私が彼氏が欲しいの」
そんなことを思ってベッドに横になっていると、史の声が聞きたくなった。
「どうせ、従姉のお姉さんとのデートぐらいにしかならない」
でも、「暇を持て余すには辛い」だったので、「遊びに行こう」コールをかけたくなったのである。
華蓮
「ねえ、史君、今度の土日のいずれか空いている?」
史
「えっと・・・土曜日なら空いています」
「日曜日はレッスンなので」
華蓮
「暇だから遊びに行きたい」
我ながら、あまりにも、本音と思うけれど、史はまじめ。
「遊びに行くって、寒いですよ」
華蓮
「伊豆の温泉は?温まるよ」
史は笑った。
「それはそうですねえ、温泉は温まりますね」
そして気になることを言う。
「僕だけ?」
華蓮は、言葉に詰まった。
「今のところ、史君に最初に声をかけたの」
実は、史を独占したくて仕方がない。
史は、また笑った。
「伊豆のお刺身美味しいですよね、食べたいなあ」
華蓮は、うれしくなった。
「行こうよ、お刺身と温泉、富士山も見える」
史は、突然声を落とした。
「姉貴が、部屋に入って来たんです、後でいいですか?」
確かに、由紀の「史!誰とお話してるの!」と言う声を、華蓮も聞き取った。
華蓮は、ため息をついた。
「わかった、面倒だったら、由紀ちゃんも里奈ちゃんも誘う」
史は、明るい声、
「はい、楽しみです」
と電話を切った。
華蓮は、またベッドに横になる。
「ここまで来たら清さんも誘って、由紀ちゃんと同じ車にしてもらおう」
「私は、史君と・・・しかたない、里奈ちゃんが参加したらしかたない、独占は無理だ」
「結局、何も進まない」
華蓮の悩みは、なかなか解決しないようだ。




