京都での新年会兼披露宴(4)
京都での新年会兼披露宴が始まった。
冒頭のご挨拶は、当主の大旦那。
始まる前から奥様から
「マスターと清さんのコラボ料理があるのですから、手短に」
と、クギを刺されている。
大旦那は、
「ああ、そうだな、それも楽しみだ」
と答えるけれど、実際には短くなるかどうかは不明、何しろ話し出すと時間超過がたまにある。
さて、大旦那は集まった一族全体に頭を下げて、新年のご挨拶を始めた。
「皆さま、新年、明けましておめでとうございます」
「今年も、無事、平穏な正月を迎えることができました」
と、そこまではいいけれど、
「さて、現在の日本、そして世界を取り巻く状況においては・・・」
大旦那は、「諸情勢の話」を始めてしまった。
晃がそこで苦笑い。
「これ・・・長い・・・」
美智子
「でも、わかりやすい話をするよ、たまにはいいの」
涼子
「滅多に聴けないよ、こんなお話」
奥様は、面倒そうな顔。
「せっかくクギをさしたのに、聞きやしない」
史は真面目に聴いている。
「いつかは、こういう演説もしてみたい」
由紀は、そんな史をフフンと笑う。
「史みたいな、お子ちゃまの演説なんて聞いてあげない」
加奈子も、そんな感じ。
「史君は音楽のほうがいい、難しい話はして欲しくないもの」
愛華は、さすがに昨晩眠れなかったことが、ここに影響が出た。
大旦那の演説が始まった途端に、コクリコクリと居眠り状態。
厨房で話を聴いているマスター
「えーっと、やっとアジアの話になって、次はアメリカで、ヨーロッパかなあ」
清
「スープの仕上がりを少し遅くします、ちょっと長い」
それでも、大旦那は「世界情勢」から話題を変えた。
「さて、昨年のマスターいや佳宏君と涼子さん、祥子さんの披露宴に続いて、今年も素晴らしい披露宴となります」
「あの久我家の跡取りの道彦君が、日本に戻って来た途端に、素晴らしい亜美さんという伴侶を迎えることになったのです」
「カフェ・ルミエールの文化講座の開講にあたっては、京極家の華蓮さんと、協力し、素晴らしい文化講座を立ち上げることに尽力」
「そして現在は、事務局として、日々管理や、魅力ある事業計画を立案、その素晴らしい才能を発揮しています」
「また、亜美さんも、実に素晴らしい女性」
「大手一流企業から、カフェ・ルミエール文化講座に転職してこられ、本当に素晴らしい仕事ぶり」
「その機転の良さ、心遣いの細かさは、人として、何より道彦君の伴侶として、この上ありません」
ここまで、紹介して、大旦那は道彦に目で合図。
そして、道彦の「ご挨拶」が始まることになる。




