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カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
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カフェ・ルミエール楽団冬のコンサート(5)

カフェ・ルミエール楽団冬のコンサートの第二曲目、ブラームスの「ピアノ協奏曲第2番」は、史がソリストをつとめる。

来年から進学予定の音大関係者など、音楽関係者は一様に身を乗り出して、史の登場を待つ。

「あの難曲をどう弾くのかな」

「史君の新しい音楽性が発見できるかもしれない」

「とにかく、ワクワクしてくる」

・・・・そんな状態で、概ね、期待する声が大きい。


しかし、姉の由紀は、胸を抑えて、演奏前から震えている。

「うーーーー・・・あのアホの史だよ・・・ヘマしたら泣くよ、きっと」

「どうして、あんな難しい曲を選ぶの?」

「結局、顔見るのが怖くて、舞台裏にいけなかった・・・」

「里奈ちゃんにまかせちゃった・・・姉失格だあ・・・」


その由紀の様子に、父晃は苦笑い、母美智子は呆れているけれど、会場内で拍手が始まってしまった。

ということは、史が舞台袖口に顔を見せ、登場してくることになる。


由紀は、もはや舞台から目を離せない。

「あーーー!アホの史!指揮者の榊原先生と出て来ちゃった!」

「ワインレッドのスーツ・・・七五三みたいだけど・・・」

「そんなこと言っている場合じゃないって!」


その史が、指揮者榊原氏と一緒に、舞台の中央に立ち、深いお辞儀。

そして、会場全体からの大きな拍手に包まれる。


この時点で、由紀の顔は、真っ赤。

顔をおおって、泣き出しそうな雰囲気になっている。


母美智子が、由紀の手をギュッと握った。

「あなたが一番、オタオタしている、恥ずかしい」

少々キツメの言い方。


舞台では、史がピアノの前の椅子に座った。

そして、少し、目を閉じ、指揮者榊原に合図。


第一楽章が始まった。

最初は、ホルンの牧歌的なソロ、それに史のピアノがふんわりと絡む。


史のピアノの師匠、内田は、この最初の時点で、素晴らしい出来を確信した。


「音の粒が、整然と整っていて、しかも重たくない」

「一音一音に情感があふれている」

「メロディーの歌わせ方、タメの作り方、ダイナミックスの付け方も完璧、それが素晴らしい」

「本当に大きくて、豊かな音楽性だなあ・・・成長したね、史君」


音大の学長が、ポツリとつぶやいた。

「このままで、トッププロと、全く遜色がない」

「何より、オーラがすごい」


また、いつもは「批評しながら」聴く傾向がある、先輩音大生や音楽家たちからも、全く声が出ない。


内田がその様子を見て、

「まあ、こうなると思った、史君が本領発揮すれば、誰も何とも言えなくなる」

と、微笑んだ。



史の演奏は、そのような状態の中、順調に進んでいく。


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