カフェ・ルミエール楽団冬のコンサート(2)
史の一家と里奈は、タクシーで演奏会場に。
父晃が演奏会終了後、カフェ・ルミエールでのレセプションに参加、お酒を飲むのでタクシーということになった。
晃
「大旦那が飲むって言っているし、マスターも店を休んで来るからねえ」
美智子
「じゃあ、私たちも飲んでもいい?」
晃
「洋子さんも飲むし、ルクレツィアさんは酒豪だし」
美智子
「それじゃあ、私はルクレツィアさんへのお礼もあるから、ご一緒するかな」
などなど、大人たちは「飲む話」が中心。
由紀は、それに少々呆れ顔。
「何?飲むためにコンサートに行くの?」
「史がこんなに頑張って練習しているのに、超無神経」
そんな由紀に里奈が、耳元で
「きっと音楽のこととか、演奏のことを言うと、史君の気に障ると思っているのでは?あえてそんな話題にしていると思うんです」
由紀は、「そうかなあ」と思って、史を見ると、史は目を閉じている。
由紀
「寝ているの?史」
と聞いても、史からは返事がない。
そして由紀が、つい起こそうとすると、母美智子から「たしなめの言葉」。
「由紀!余分なことをするんじゃない!そっとしておきなさい」
由紀は、スゴスゴと腕を引っ込めることになった。
さて、タクシーは演奏会場に到着した。
史は、リハーサルのため、そのままホールに向かった。
里奈と由紀は、少しして、楽屋裏に出向く予定になっている。
ただ、母美智子は、由紀の楽屋裏行きは、納得していない。
「また由紀が余計なことを言って、史に変なショックを与えても困る」
「ほんと、姉なのに、無神経なところが多すぎて」
「特にソリストの当日は、そっとしておくのが一番なのに」
「おまけにブラームスの難曲でしょ?」
晃も、美智子と思いは同じらしい。
「落ち着いている奈津美ちゃんか、美幸さんに楽屋裏に入ってもらって、由紀はレセプションの準備にさせようか」
両親の意見が、いつも通り速やかに決定したので、由紀はレセプション担当を指示されてしまった。
当然、由紀はムッとする。
「何?私、オジャマ虫ってこと?」
「そんなのやだ、何も言わないから、史の演奏だけは聞かせて」
「絶対聞く、やだやだ、絶対聞く!」
里奈は、その様子を見ていて、晃と美智子に、そっと近寄り耳元で
「私が、何とかしますので、史君の演奏だけは」
晃と美智子は、苦笑い。
晃
「ごめんね、神経使わせて」
美智子
「里奈ちゃんのほうがお姉さんみたい」
そんな一幕があったけれど、少しずつ開演時間は近づいている。




