道彦と亜美の挙式に向けて(2)
亜美の両親は、カフェ・ルミエールに到着した。
カフェ・ルミエール店内では、マスターが待っていた。
このカフェ・ルミエールから、マスターの車で大旦那のお屋敷に行く予定になっている。
マスターは、亜美の両親に深く頭を下げる。
「はじめまして、近衛佳宏と申します」
「仲人である近衛兼実の甥にあたりまして、このカフェ・ルミエールのシェフをしております」
そのマスターに亜美の父が、頭を下げる。
「いえいえ・・・娘の亜美と道彦君から、マスターや大旦那様のことは、常々聞かされております」
「本当に、亜美で大丈夫かと、心配なのです」
亜美の母もマスターに頭を下げ、
「本当に不安ですが、娘が選んだ道、よろしくお願いいたします」
亜美の母は、少し涙ぐんでいる。
マスターは、顔をあげた。
「いやいや、私も当然ですが、大旦那も奥様も、亜美さんには感心しきりなのです」
「大旦那も奥様も、私より話がしやすいとかで、連絡も密なのです」
マスターは、少し笑う。
そして、声をかけた。
「そろそろ、大旦那のお屋敷に出向きましょう」
「道彦君たちと、ほぼ同じ時間に着くと思われます」
大旦那のお屋敷と聞き、亜美の両親はまた緊張した面持ちになるけれど、マスターの車に乗りこんだ。
一方、道彦と道彦の両親、そして亜美は、大旦那のお屋敷に少し早く到着した。
大旦那のお屋敷では、大旦那と奥様が出迎えた。
大旦那は和装、そしてゆったりと、にこやかな表情。
「ほう、懐かしいなあ、パリからの長旅を御苦労さま、孝彦君と恭子さん」
奥様も、しっかりと着物を着こんでいる。
道彦の父孝彦は、大旦那に頭を下げる。
「大旦那様、今回は無理を申し上げて、仲人など」
大旦那は、にこにこしている。
「いやいや、道彦君と亜美さんの挙式なら、私がしたい」
「マスターが縁結びのきっかけを作ったようだけど」
「マスターは当日、忙しくてね」
奥様も、笑っている。
「マスターがね、当日の料理のシェフをしたいそうなんです」
「それも、なんやかんやと、今までと変えたいらしくてね」
道彦の母、恭子は少し不安気な亜美の手をずっと握っている。
「亜美ちゃん、心配いらない」
「みんな私たちに任せて」
玄関のチャイムが鳴った。
どうやら、マスターと亜美の両親が到着したようだ。




