道彦と亜美の挙式に向けて(1)
今日は、道彦の両親がパリから帰国する日。
そして、亜美の両親と顔合わせをする日。
尚、顔合わせは、大旦那夫妻が仲人をつとめることから、大旦那のお屋敷で行う。
また、マスター夫妻も、大旦那のお屋敷にて、同席することになっている。
いつもの通り冷静な道彦はともかく、迎えに待つ空港で亜美は不安でならない。
「どうしよう、大旦那のお屋敷なんて・・・格式が違い過ぎる」
「私の親が、粗相をして破談になるとか」
「そんなことになったら生きていけない」
そんな亜美に、道彦が声をかける。
「大丈夫だよ、そんな心配いらない」
「僕の親を信じて欲しい」
亜美は、それでも不安。
「私の母がとにかく心配して・・・」
「でも、その前に、私が直接、顔を見せていないし」
道彦は、少し震える亜美の手をギュッと握る。
亜美は、震えた。
「はぁ・・・怖くて涙が出そう・・・」
そんなことを言うものだから、道彦は肩を抱いた。
そして、小声で
「僕を信じて」
亜美がコクリと頷くと、道彦は、いきなり大きく手を振っている。
「来たよ、あっちで手を振って歩いて来た」
つまり、道彦の両親がパリから到着し、歩いてくるようだ。
亜美は、その言葉で直立不動状態。
誰が見ても、カチンコチン状態になった。
道彦は、やさしく亜美に声をかける。
「僕たちも歩こう」
亜美は、コクリ。
「うん・・・」
顔が真赤になっている。
そして、とうとう道彦の両親が、道彦と亜美の前に。
道彦が、出迎えの挨拶と、それぞれの紹介をする。
「父さん、母さん、長旅お疲れ様」
「それから、この人が亜美さん」
「それから、父の孝彦と、母の恭子です」
まず、亜美は道彦の父の孝彦と母の恭子に深く頭を下げる。
「亜美です、長旅お疲れ様でした、私は亜美と申します」
「今後とも、よろしくお願い申し上げます」
道彦の父、孝彦は、やさし気な顔。
「いやいや、お顔をあげてください」
「こちらこそ、はるばる成田までお迎えに来ていただいて、感激しております」
「道彦をよろしくお願いします」
と、しっかりと亜美の手を握る。
その次に、母の恭子。
その目が潤んでいる。
「亜美さん、本当にありがとう」
「道彦をよろしくね、ああ・・・感激して声が出ません」
恭子は、亜美をそのまま抱きしめてしまった。
亜美も、抱きしめられたまま、泣き出してしまった。




