史の回復と結衣(2)
不穏な雰囲気の理由など、サラサラわからない史は、少しボンヤリとしている。
しかし、結衣は察知したらしく、少し慌てた。
「えっと・・・源氏物語の夜間の社会人講座に行くことになったので」
「史君が詳しいから、特別レッスンをしてもらおうかと思って」
「それと、御茶ノ水神保町で、本探しに協力をお願いをと・・・」
結衣としては必死に説明をする。
「ふむ・・・」洋子
「特別レッスンねえ・・・」奈津美
「これは抜け駆けって言うのかな」洋子
「それは、違うかな、でも、そうかもしれない」奈津美
洋子と奈津美としては、とにかく、口惜しいのである。
それでも
「フラチなことは厳禁です」洋子
「そういうことは、公明正大にしなければ、いけない」奈津美
「夕飯までには、家に帰らせること」洋子
「里奈ちゃんには、内緒にしておく」奈津美
話の混乱はあるけれど、とにかく「おせっかい」を焼く。
結衣は、少しあきれて「おせっかいやら何やら」を聞いていたけれど、心に思うことはただ一つ
「連れ出しちゃえば、こっちのものさ」
「・・・まあ、このボンヤリフェイスの可愛いこと・・・」
しかし、絶対に、そんな思いは顔には出さない。
あくまでも、「やさしく」史を見つめている。




