加奈子の上京(4)
加奈子と由紀、そして史は三人揃って、大旦那のお屋敷を出た。
加奈子はにっこり。
「はぁ・・・これで自由だ、都内満喫だ」
由紀も、加奈子の気持ちを察する。
「そうなんだろうねえ、京都なんか観光地過ぎて、わが街って感じがないのかな」
加奈子は頷く。
「とにかくあちこちに、神社、寺、史跡やろ?そういう過去の念とか、おどろおどろしいものが渦巻いていてな、気が抜けないんや」
史も、加奈子の言葉に反応した。
「洋子さんから聞いたけれど、ローマにしろ、パリにしろ、ものすごい血が流れていて、霊感が強い人は歩きづらいって」
「戦争やら暴動、内部抗争とかね」
由紀は、そんな史の「講釈」が気に入らない。
「史のアホ!また理屈いってる!そんな心配だったら、留学はやめなさい」
加奈子がヒヤヒヤするほど、由紀の口調は強い。
しかし、史もさるもの、簡単に切り返す。
「大丈夫、僕は霊感なんてない、留学を楽しむ」
・・・・そんな姉と弟の少々の口争いはあったものの、一行は京王線沿いの大学最寄りの駅に着き、大学まで歩いて広いキャンパスを満喫。
加奈子
「当たり前だけど、学生さん多いね」
由紀
「でも、何かのびやかな感じ、私の大学は四谷だからなあ、少し違う」
史
「加奈子ちゃん、四谷は怪談で有名なんだ」
加奈子
「へえ・・・面白い」
由紀
「史!うるさい!私はお化け嫌いなの!」
史
「姉貴はお化けじゃないよ、そんな感じではない」
加奈子
「へえ、どんな感じ?」
由紀
「立派なお姉さん」
史
「モンスター姉」
由紀が史をポカリをしようとすると、それを察した加奈子は史と腕を組んでしまう。
由紀はむくれた。
「加奈子ちゃんとか華蓮ちゃんが、そういうことをするから、アホの史がつけあがるの」
しかし加奈子も、史の味方をする。
「ええやん、可愛いしな、史君・・・って同い年やけど」
腕を組まれた史はコホン。
「定食屋に行かない?お屋敷では絶対食べられないものがいい」
加奈子
「ニラレバとか、生姜焼きとか、普通の学生の味がいい」
由紀も、その話題に加わって来た。
「麻婆豆腐丼とか天津飯もいいなあ、中華丼もいい」
史は由紀の顔をチラリ。
「揚げたてのカツカレーとかさ、メンチカツのカツカレー、チーズトロリンのカレーもあるかなあ」
加奈子はまた何か思いついた。
「オムライスもいいなあ、うーん・・・」
由紀は、顔がパッと輝いた。
「よし!今日はダイエット停止!モリモリ食べよう!」
史は、少し呆れた。
「姉貴、昨日は絶対続けるって言ったでしょ?」
しかし、由紀の顔は食欲に満ちている。
加奈子は笑った、そして今後が不安になった。
「由紀ちゃんと一緒に歩くと、太る」
「うーん・・・どないしよう」
いとこの三人組は、定食屋をめざして歩きだした。




