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カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
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史と禅

史は、菅沼先生のところで、呼吸法を教わってから、日ごとに表情が落ち着いてきている。

以前のような沈み込む感じも、悪く言えば「繊細過ぎる」雰囲気もない。


その史を父晃が注目した。

「少し大人になったのかな、自然に動いている」

母美智子も、不思議な顔。

「何か、笑い顔が自然になった、前は笑っていても、どこか暗かった」


ただ、由紀は異論を唱える。

「たまたまでしょ?すぐにまた、ダウンして困らせるに決まっている」

由紀はどうしても、史を認めたくないらしい。

というよりは、「弱々しい史」のほうが、好きのようだ。


さて、その史が最近読みだした本は、「禅語」がたくさん書き連ねてある小さな本。

何の気なしに、普通の本屋で買ったらしい。

とても禅を「本格的に解説」したような本ではない。

しかし、史は全く気にしない。


「菅沼先生も言っていた」

「秘仏とされるとか数億の価値があるとか国宝になるとか、そんな仏像であっても、道端の雨に濡れた仏像と何ら価値が変わらない」

「史君がメモ用紙に仏様を落書きしても、仏様は仏様、価値は変わらない」

「そもそも仏様の優劣なんて、ありえない、人間が口にするべき話じゃない」

それを思い出して、毎日1ページずつ、その小さな本をめくる。


その史が今日開いたページは

「本来無一物」と書かれている。


史は読み進む。

「仏に逢えば仏を殺せ、祖に逢えば祖を殺せ」

「これまで身にまとって来たものを、全て捨てろ」

「何物にもとらわれるな」

「何物にも縛られるな」

「何物にも執着するな」

「今、自分がここにる」

「それだけが真実」


史は、そこまで読み進んで、目を閉じた。

そして教わった通りの呼吸法を実践する。


「何でもいい、何も考えられない」

「何もないから何も考えない」

「足が温かいっていいな」

最初は、そんな感じ。


しだいに、考えるとか考えないとか、それもなくなった。

史は、他人から見れば、ただ座って呼吸をしているだけの状態になっている。


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