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カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
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史とブラームス(4)

心と状態を読まれてしまってポカンとなってしまった史に、菅沼はまた不思議なことを言って来た。


「史君、ソファでなくて、そこにある椅子に座ってみてくれないか」


史は、その言葉で、またしてもキョトン、それでも断る理由もなく、普通の椅子、それもどこにでもあるパイプ椅子に座った。


菅沼は、パイプ椅子に座った史を見て、ウンウンと頷く。

そして、史にとって、予想外のことを言う。

「史君、背中が丸くなっている」


史は、ハッとなった。

「はい、そういえば・・・」

確かに、背筋が真っ直ぐでないと、時々感じていた。

史は背筋を真っ直ぐに直した。


菅沼は、また別のことを言って来た。

「史君、呼吸法ってわかるかい?」


史は、またしてもキョトン。

吸って吐く程度しかわからないので、答えられない。


菅沼は言葉を続けた。

「鼻の息は 通じるに任せ 喘がず 声せず 長からず 短かからず」

「緩まず 急がしからざれ」


史は、ますますポカンとなってしまった。

その史に菅沼は、また声をかける。


「もし、史君が問題が無かったら、今、僕が言った通りに呼吸をしてくれないか?」

「目を閉じても、閉じなくてもいい」

「時間は、史君に任せる」


史としては、「この程度なら」である。

何も、「問題も何も」感じることはない。

「わかりました」と返事、目を閉じて、菅沼の言った通りに「呼吸」を始める。


「鼻から吸うのは通じるに任せだから、適当でいいのかな」

「喘がずだから、適当でいいんだ」

「声せずだから、声も出さずで、音も出さない・・・」

「そうすると、そんなに吸わなくてもいい」

「長からず、短からず・・・これも適当でいいのかな」

「緩まず 急がしからざれ 自分のペースってことかなあ」


目を閉じた史の耳に、小鳥の声が聞こえてきた。


「可愛い声だなあ、なんか落ち着く」

「最近、聞いていなかったな」

「聞く余裕がなかった」

「でも、可愛い声だな」


史は、少しずつ呼吸が深くなっている。


「背筋を真っ直ぐにした方が、息がたくさん吸える」

「その後、少しペース変わるけれど、またすぐに落ち着く」


史は、だんだん、何も考えなくなっている。


「いいや、これ気持ちいい」

「ずっと、このままでもいいくらい」

「というか、眠くなってきた」


史は、ウツラウツラをはじめている。

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