洋子の「史独占計画」(3)
しばらく腕を組み考えていた史が、ようやく口を開いた。
「チョコレートでコーティングしたブランデーケーキ」
「その中に、ドライフルーツを入れる」
「そのドライフルーツの中に、リンゴ、レーズン、オレンジピール、イチゴ、パインもあるかなあ」
「その大きさと組み合わせですね、しつこくならない程度に」
洋子は、フンフンと頷く。
そして史に一つの提案というよりはお願い。
「ねえ、史君、二階の料理教室のキッチンで、新作ケーキ試作をしたいの」
「史君が付き合ってくれると、助かるんだけど」
と、そのまま、今度はガッチリと史の手を握ってしまう。
ただ、この洋子の動きには、奈津美、結衣、彩がますます呆れた。
奈津美
「なんだかんだといって、それが目的では?」
結衣
「絶対に乱入してやる」
彩
「取り囲んで、これ以上触らせない」
ただ、史は冷静。
「えっと・・・コンサートの練習とか・・・いろいろあるけれど」
「洋子さんのご都合もあるでしょうし」
洋子は、ニコニコと首を横に振る。
「あらーーー!忙しいのにねえ、ごめんね」
「いいの、そんな心配は、私が史君の都合に合わせる!」
そして、最後に「本音」が出た。
「夜になるから、その後はお食事でも」
史は、「わかりました」と言い、手帳を開く。
そして、
「うーん・・・水曜日ならいいかなあ」
「水曜日の夜に」
と、ニッコリ。
洋子は、その言葉で舞い上がってしまった。
「わ!やった!水曜日ね、材料も準備しておく!」
とまでは良かった。
「あのね、行ってみたいベルギー料理店があるの」
「そこを予約していいかなあ」
本当に満面の笑顔、史の手を握る力も強くなった。
史は、ニッコリのまま。
「へえ・・・ベルギー料理ですか」
「それは面白いなあ、美味しいということは聞いたことあります」
「洋子さん、さすがです」
洋子の誘いを受ける雰囲気。
ますます気に入らない奈津美、結衣、彩は三人で対抗策を相談することになった。




