由紀と史のデート?(3)
由紀と史は、予約した時間通りに、京都に本店を持つ銀座の懐石料理店のあるビルに到着した。
エレベーターで、その店のある階にまで移動、由紀が印刷した予約確認の紙を持ち、店内に入ると、さっそく仲居さんだろうか、
「いらっしゃいませ、本日のご予約はございますか」
と、声をかけてきた。
由紀は、予定通り
「はい、ここに」
と、その予約確認の紙を渡す。
そして、普通であるならば、店名も全て間違いがないので、スンナリと予約席に案内されるはず。
しかし、その間違いがない予約確認の紙を受け取った仲居は、少し難しい顔。
「えーーー・・・はい・・・確かに予約は、これで成立となっているのですが・・・」
と、由紀の顔を見たり、史の顔を見たり、悩んでいる様子。
由紀は、ムッとしてきた。
「何か手違いでも?」
少々、言葉も強い。
確かに「予約成立」になっているのに、何故、そんな態度を取られるのか、理解ができない。
仲居は、それでも、由紀と史を座席に案内しようとはしない。
「少々お待ちください、支配人をすぐ呼んでまいります」
と、頭も下げずに、奥に引っ込んでしまった。
史は、由紀の顔を見た。
「こうなると食べる以前の問題では?」
「人を見ている感じ、子供だから馬鹿にしているような雰囲気を感じた」
「それと、仲居さんの、香水がキツ過ぎ、それが料理につけば、食べる価値なし」
由紀も、珍しく史の意見がマトモだと思ったようだ。
「その通り、全く気に入らない」
怒り顔になりつつある。
さて、史と由紀がそんな話をしていると、その仲居が支配人らしき人を連れてきた。
その支配人らしき人は、三十代半ばだろうか、髪の毛をキッチリ香料が強い整髪剤で固め、身体つきも顔も精悍、上質なスーツを着こなした、いかにも「やり手」の実業家風。
そして、頭も下げずに、いきなり声をかけてきた。
「あなた方、確かに当店で予約が成立はしていますよ」
「ただね、こっちだって、お客を選ぶ権利があるんですよ」
「見たところ、かなり若くて、子供じゃないですか」
「それも関東育ちでしょ?言葉がそうですから」
「無理です、関東育ちの若い子供に、京都の微妙な味は」
「ネットで予約できるといってもね、何でもいいってわけではないんです」
その実業家風、支配人はポンポンとたたみかけてくる。
そして、
「さあ、さっさと帰れ、わかるだろう?これだけハッキリ言われれば」
と言い切ってしまった。
この時点で、由紀の顔は怒りで真っ赤。
史は、スマホで、全てを録音している。




