マカロン(2)
「マカロンというお菓子は」
洋子が真面目な顔になり、話し始めた。
いつの間にか、奈津美もキッチンから顔を出している。
「ご存知の通り、フランスのメレンゲ菓子で、ふんわりとした口当たりの軽い焼き菓子で、卵白と砂糖を泡立てたメレンゲに、細かく砕いたアーモンドやくるみなどの木の実を混ぜ合わせて一口大に焼き上げるもの」
「それがベースで、ロレーヌ地方のナンシーのマカロン、ボルドー地方のサン・テミリオンのマカロン、パリのパリジェンヌのマカロンなどと呼ばれるマカロンがあります」
「ナンシーのマカロンはロレーヌ地方のナンシーという地に住んだふたりの修道女が18世紀に完成したマカロンで、特徴としては、砂糖を煮詰めてアーモンドパウダーなどの材料と合わせているために、表面がひび割れて平たい形になる」
「それから、サン・テミリオンのマカロンは、ワインで有名なボルドー地方の代表的なマカロン」
「サン・テミリオンのマカロンは特産の、ソーテルヌという甘口のワインを加え、湯せんで温めてつくるのが特徴」
「パリのマカロンの、マカロン・パリジェンヌはふっくらとしてスベスベの表面、都フリルのようなものまでついていて、見た目も可愛らしい、他の地方のマカロンとは違って卵白に砂糖を加えて泡立てるので仕上がりがふっくらとする」
洋子から、本当に基本的なマカロンの形状と歴史について、語られた。
翔も香奈も懸命にメモを取っている。
「それでね、もうひとつ、言わなければならないことがあってね」
「マカロンはもともとは、フランス菓子ではないということ」
洋子は、話を聞いている全員の顔を見た。




