文化講座開講記念パーティー(2)
大旦那は柔らかな表情で挨拶をはじめた。
「ご来場の皆さま、本日は記念式典、記念講座、記念コンサートと、長時間に渡り、本当にお疲れ様でした」
「ここで、ささやかながら、開講記念パーティーということで、当講座の感謝の意を示したいと存じます」
「なお、本日の料理に関しましては、当カフェ・ルミエールのマスター及び、京都より呼び寄せた日本料理人の清、そしてデザートには洋子さんが、担当しましたので、是非、ご賞味をお願いいたします」
大旦那はそこまで、挨拶をして、深くお辞儀。
記念式典での、少々長い挨拶とは異なり、全くシンプルなもの。
それでも、パーティー客たちは、料理とデザートへの期待が高いのか、全員の顔が輝いている。
その大旦那が大きな拍手を浴びて、自らの席に戻ると、華蓮は司会を続ける。
「それでは、ここで乾杯をいたしたいと思いますので、皆様、グラスをお持ちになり、ご起立をお願いいたします」
「尚、乾杯の音頭は、当講座の講師を代表して、近衛晃がつとめさせていただきます」
華蓮のアナウンスにより、パーティー客全員がグラスを持ち、起立。
晃がステージ中央に立った。
晃は、にこやかな顔。
「それでは、大旦那の挨拶も、珍しくシンプルなものでした」
「彼も食いしん坊で飲み助なので、我慢が出来なかったことでしょう」
その晃の言葉に、客席からクスクス笑いが起きるし、当の大旦那も笑っている。
晃は言葉を続けた。
「とにかく、今はこのシャンパンを飲み干しましょう」
「そして、これからの地の世界へと旅立つ力を、このシャンパンから!」
晃は大きく息を吸い込んだ。
そして大きく、うららかな声が会場に響き渡る。
「乾杯!」
晃の言葉通りに、全員がシャンパンを飲み干した。
そして、また大きな拍手が会場全体に響き渡った。
華蓮
「それでは御着席願います」
「ただいまより、料理をお運びいたします」
華蓮のアナウンスで、全員が着席となった。
さて、史はニコニコしている。
「すっごいシャンパンを使ったなあ」
里奈は、顔が少し赤い。
「飲んじゃった」
史
「飲み干すには惜しいシャンパン」
里奈
「え?どういうこと?」
史
「おそらく、シャンパンの最高峰、クリュグを使った」
里奈
「すごく高いの?」
史
「うん、かなりね」
里奈
「震えてきた、すごいパーティーになりそう」
史
「まあ、お楽しみ、何が出て来るのやら」
史と里奈だけではない、出席者全員が期待を込めて、最初の一皿を待っている。




