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カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
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カフェ・ルミエール文化講座開講記念コンサート(2)

文化講座開講記念コンサートの二曲目は、史が指揮をとる「美しき青きドナウ」。

誰でも知っているウィンナ・ワルツの名曲である。


その史が、真紅のベルベットスーツに着替えて、ステージに登場すると、またしても万雷の拍手。


ドナウ川とその周辺に柔らかな朝の光が差し込むような静かで幻想的なはじまりのなか、ゆったり、そして流麗なウィンナワルツが進んでいく。


指揮者の榊原も袖口で、史と楽団が奏でる青きドナウを聴いている。

「とにかく美しいウィンナワルツだなあ」

「モーツァルトはモーツァルトですごかったけれど」

「このワルツには、音楽の愉しみが華のようにあふれている」


華蓮はうっとり。

「踊りたくなります、これなら」

道彦はニコニコしている。

「ほんと、ウィーンの雰囲気を思い出すよ」

「日本の指揮者だと、ガチガチに振るから、こうはならないけれど」


日本の指揮者と聞いて、榊原は苦笑い。

「そうなんだよ、日本の指揮者連中ってのは、クラシックを高尚でお堅い音楽とばかり考えていて、とにかく楽譜に忠実、リズムを崩せない」

「音楽が、まだお習い事の延長なのさ」


由紀はまた別の考え。

「史のやつ、また意地悪?青きドナウに合唱が加わるアレンジもあるのに」

「どうしても、私を歌わせないってこと?」

「マジ、許せない、あのスーツだって可愛すぎ」

「あーーいう格好するから、どうでもいい女どもが群がる」

「史は里奈ちゃんだけでいいの、里奈ちゃんだけが私の辛さをわかってくれる」


そんな話を振られた里奈は照れた。

「とにかく楽しいウィンナワルツとお姉さんです」


さて、「美しき青きドナウ」は、明るく華やかな盛り上がりの中、終わった。

史が聴衆に向き直ると、またしても万雷の拍手。


京極華蓮がここで司会。

「皆さま、本日の演奏曲目はこれにて終了でございます」

「ご清聴ありがとうございました」

と、開講記念コンサートの終了を告げるけれど、それで収まるような雰囲気は皆無、華蓮の言葉の最中から「アンコール」の声がかかっている。


由紀が道彦の顔を見た。

「次は道彦さんと史?」


道彦はにっこり。

「うん、アランフェスね、史君とのピアノコラボだったけれど、榊原先生がオーケストラ版に編曲してくれた」


榊原が、道彦の肩をポンと叩いた。

「さて、行きますかな」


京極華蓮は、再び司会席に。

「本当にありがとうございます」

「皆さまのアンコールにお応えさせていただきます」

「わが事務局の久我道彦のトランペット、史君のピアノと楽団によりまして、アランフェス協奏曲を演奏させていただきます」


指揮者榊原と道彦は、史と同じように万雷の拍手を受けて、ステージに出ていく。

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