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カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
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カフェ・ルミエール文化講座開講記念講座(1)

カフェ・ルミエール文化講座開講記念式典は無事に終了し、源氏学者である晃の記念講座となった。

その晃の講座のタイトルは、「源氏物語の成立と、その後」というもの。

客席、いや受講生たちの万雷の拍手を浴びて、晃がステージ中央に進み、深く頭を下げ、講座を開始した。


晃はまず、感謝の意を伝えた。

「本日は、ようこそ、このカフェ・ルミエール文化講座開講式典にご出席をいただき、講師陣を代表して心より感謝申し上げます」


再び万雷の拍手を浴びると、おもむろに講義を始める。

「さて、本日の講義といたしましては、お手元の次第にある通り、源氏物語の成立とその後になります」

「その中で、まず日本という国につきましては、世界的にも稀なほど、古典籍が現存しているということ」

「かの藤原道長の自筆の日記である、御堂関白記の原本が現存しているなどが、有名な事実となります」

ここまでの話で、受講生は晃の柔らかな語り口に集中、咳一つ立てる者がいない。


晃は講義を続けた。

「さて、そういう中で本日の講義のテーマである、源氏物語の原本は、どこにあるのでしょうか」

「作者紫式部が自筆で書いた原本は、残っているのでしょうか」

受講生たちの顔に戸惑いが生まれたことを確認して、晃はその表情を少し和らげる。


「実は、そもそも、源氏物語の原本は、実在しておりません」

「そもそも、その執筆と公開は、当時どうだったのでしょうか」

「そして、皆様が知っておられるかどうかのことになりますが・・・」


受講生の表情がまたしても困惑に包まれる。


晃は、ここで少し間をおいて、さらに困惑の一言。

「実は、源氏物語には、複数の原本が存在したのです」

「それも、執筆当時から」


受講生たちがザワザワとしている様子を見て、晃はフッと笑う。

そして講義を続けた。

「かの作者である紫式部日記38段に、その経緯がしっかりと書かれているのです」

「それによりますと、『つぼねに、物語の本どもとりにやりて隠しおきたるを、御前にあるほどに、やをらおはしまいて、あさらせ給ひて、みな内侍の督の殿にたてまつり給ひてけり。よろしう書き替へたりしは、みなひき失なひて、心もとなき名をぞ、とり侍りけむかし』、これをわかりやすく現代語訳をいたしますと」


「自分の局に、源氏物語の本などを実家に取りにやって隠しておいたのを、私が中宮様の御前にいる時に、道長様が内緒でお越しになられて、お探し出しになられて、全て内侍の督の殿にお差し上げなさってしまったとのことです」

「それとは別に、上々にという程度に書き直してあったほうは、すっかりなくなってしまったことでありますし、そもそもの草稿本が内侍の督の殿に渡ってしまったとなれば、悪い評判を取ってしまうに違いありません」


晃の現代語訳で、受講生たちの中には、またしても、困惑が広がっている。


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