カフェ・ルミエール文化講座開講(4)
大旦那は、ステージ中央の演台の前までゆっくりと進み、立ち止まった。
そして、一旦客席に深く頭を下げ、話しはじめた。
「本日は、このカフェ・ルミエール文化講座開講式典にご参加を賜り、誠にありがとうございます」
「この文化講座を代表して、深く御礼申し上げます」
大旦那は、ここでまた深く頭を下げる。
客席には、緊張感が漂っている。
大旦那は再び、挨拶を続けた。
「さて、今回、このカフェ・ルミエールのビルにおいて、このような文化講座を開講しようと考えた理由といたしましては、まずはここの地域において、カフェ・ルミエールを懇意になされているお客様と、良質な文化を共有したいということ、またその良質な文化の中で、お客様たちとますます懇意になることが原点でございます」
「大学のような広いキャンパスがあるとか、行政の事細かな規制があるとかではありません」
「それよりなにより、私共が選び、またお客様方からご要望の高い良質な文化を、純粋に学び、共有したい」
「それにより、より良質な時間、人生を過ごすお手伝いをしたい」
「それが、原点たる理由になりました」
・・・・・・
大旦那の熱弁が続いていく。
舞台袖で聞いていた史は、途中から笑っている。
「大旦那って、僕の原稿をかなり変えちゃった」
「途中から、ほぼアドリブ」
晃も、史の隣で苦笑い。
「せっかく史が、素晴らしい原稿を作ったのにね」
「熱が入ると、どんどん変えちゃうんだ」
華蓮は、そんな史と晃に
「いや、これくらいがいい、史君の原稿は素晴らしいけれど、あのほうが大旦那らしい、客席が集中しているもの」
道彦
「脱線しているようで、大筋は史君の原稿通りだよ、史君の原稿をしっかり読み込んでいるから、あそこまで客席をひきつける話ができる」
大旦那は、熱弁を続けた後
「それでは、皆様、智の国の門をノックしましょう」
「皆さまとの素敵な時間を期待しております」
と、より大きな、明るく通る声で、熱弁を終了した。
客席は全員立ち上がり、万雷の拍手を大旦那に浴びせる。
大旦那は、演台から離れて、再び客席に深いお辞儀。
そこでまた、万雷の拍手を浴びる。
少し照れた顔で自分の席に戻ると、次の次の挨拶をする指揮者の榊原氏。
「大旦那、スタンディングオベーションですよ、さすがです」
大旦那は、苦笑い。
「あとで史に文句を言われそうだ」
「あれほど原稿の修正を頼んでおきながら、自由トークをしてしまった」
大旦那の熱弁の後は、自治会長と指揮者の榊原氏の普通の挨拶。
そのような状態で、開講記念式典は無事に進行している。




