里奈の幸せ(1)
里奈は、うれしくて仕方がない。
それは、都心の有名私立大学に、推薦入学が決定したから。
それを学園から聞いた時点で、親よりも先に史に伝えた。
「史君!決定した!」
史も本当にうれしい。
「やったね、里奈ちゃん、安心した」
「成績良かったし、すごく頑張っていたから」
そして里奈に
「推薦入学決定記念で、お祝いしよう」
と、声をかける。
里奈は
「うん!うれしい!」
そして、少し考えて
「洋子さんのケーキ食べたい」
と、史におねだりをする。
史はさっそく洋子にスマホで連絡。
洋子もうれしそうな声で
「わかった!里奈ちゃんだもの」
「特別のケーキを作るよ」
「店のみんなにも言っておく」
史が、その旨を里奈に伝え、放課後はカフェ・ルミエールに直行ということになった。
史と里奈が、カフェ・ルミエールのドアを開けると
「おめでとうーーー里奈ちゃん!」
洋子は当然、奈津美、結衣、彩の大合唱で迎えられた。
里奈は、完全に赤面。
「え・・・あ・・・」
「ありがとうございます」
と頭を下げると、六人テーブルに誘導される。
そして早速出てきたケーキは、里奈の大好物「ザッハ・トルテ」。
しかし、不思議なことに、丸のままのケーキになっている。
里奈が目を丸くしていると、若い女性が二人と、一人の若い男性がテーブルに歩いて来た。
史はニコッと笑って立ち上がる。
そして、里奈に紹介する。
「えっと、この紺のスーツを着た人が京極華蓮さん」
「僕の従妹で、もうすぐ始まるカフェ・ルミエール文化講座の事務局長」
史に紹介された華蓮は、にっこりと頭を下げ、里奈に名刺を手渡す。
「華蓮です、里奈さんの噂はかねがね」
史は次に久我道彦を紹介する。
「この男の人は、久我道彦さん、この人も僕の従妹になる、華蓮さんと同じように、文化講座の事務局」
道彦も、キチンと頭を下げ、里奈に名刺を渡す。
そして道彦が亜美を紹介する。
「この人は亜美さん、僕と同じ文化講座の事務局員、それから・・・」
「僕のフィアンセです」
亜美も顔を真っ赤にして、里奈に名刺を渡している。
里奈は、まずは「里奈です」と小声で名乗りながら、それぞれ名刺を受け取っていたけれど、やはりしっかりと言おうと思った。
「里奈です、史君とずっとお付き合いさせてもらっています」
「今日は、我がままを言ったら、こんなうれしい出会いをありがとうございます」
と、キチンと頭を下げる。
ようやく五人が席に着くと、洋子がテーブルに来た。
「もう少ししたら、マスターが何か作って来るみたい」
「もちろん、里奈ちゃんのお祝い」
里奈は、うれしくて涙顔になっている。




