カフェ・ルミエール文化講座準備(4)
史は、そのまま家に帰っていった。
それを見送った面々は、それぞれ不安。
洋子
「ほんと、由紀ちゃんって、お姉さん意識が強すぎる、あれじゃあ史君が可哀そう」
奈津美も、心配で仕方がない。
「何で早く帰ってこい・・・なのかはわからないけれど、おそらく気まずいんだろうね」
結衣は困った顔。
「高校三年生になってもそうなんだから、本当に史君独立した方がいいのかな」
彩はまた別のこと。
「でもね、史君、一人住まいできるのかな、家事とかできるのかな」
華蓮は、道彦の顔を見た。
「大旦那に言って、大旦那のお屋敷に史君ってどう?」
道彦も、少し考えた。
「まあ、史君が音楽家として羽ばたくのなら、少し環境を変えたほうがいいのかもしれないね、いつまでも子供のままではいられないしさ」
亜美は、なかなか口を出せないけれど、心の中ではいろいろ考える。
「そうだったんだ、あんな可愛い男の子にも苦手があったんだ、それがお姉さんと・・・どうしても心配しちゃうのかなあ・・・可愛すぎて」
店の中で、そんな話をしていると、マスターが入って来た。
そのマスターに華蓮が、「由紀と史」のことを、少し報告。
マスターは苦笑い。
「しょうがねえなあ・・・ったく・・・でも、大丈夫さ」
「仲が悪いようで、そうでもない」
「史君は、気持ちを抑えちゃうほうだし、由紀ちゃんは、こう思ったら突き進むタイプ、だから案外、大丈夫」
あまり気にしていない様子。
マスターは言葉を続けた。
「でも、大旦那のお屋敷なら、最高級のピアノもあるし広いし、都心にも近いからコンサートにも行きやすくなる」
「立派な誰も使っていない離れもあるしさ」
「俺から大旦那にも言ってみる」
マスターも、史の大旦那のお屋敷に住む計画については、賛成の様子。
華蓮はマスターの顔を見た。
「じゃあ、それはお願いします、大旦那も奥様も事情を知っているから大賛成で受け入れるはず」
「でも、史君自身の気持ちと、晃さんと美智子さんの了承も必要だから」
マスターが頷くと、華蓮は話題を変えた。
華蓮
「開講記念パーティーの招待状は全ての受講生と、来賓に発送したので」
マスター
「そうだね、それの出席数で、料理も準備するよ」
道彦
「地下ホールの飾りつけは、僕と亜美さんで考えます」
華蓮
「記念式次第のパンフレットは、後は大旦那のご挨拶文だけです」
マスターはそこで思い当たることがあるらしい。
「ああ、もしかすると・・・」
即座にスマホを取り出し、電話をかけ始めている。




