美智子と由紀は産直市に
美智子と由紀は、車に乗って、お買い物となった。
由紀は、美智子に聞く。
「お買い物って、どこなの?」
「わざわざ車使うんだから、遠いところなの?」
由紀としては、何しろ「買い物に行く」と聞いただけで、行き先を何も聞いていない。
美智子はハンドルを握りながら、
「全然、遠くないよ、近所」
由紀は、呆れた。
「どうして近所に買い物に行くのに、車を使うの?」
「歩けなくなったの?もうそんな足腰が弱ったの?」
ついつい、文句口調になる。
美智子は、そんな文句には付き合わない。
「あのさ、近い遠いは関係ないの」
「荷物が重くなるから、そんなこと言うと由紀に重たいものを持たせる」
簡単に切り返してくる。
さて、美智子と由紀が向かった先は、産直市だった。
車を駐車場に入れて、どんどん美智子は歩いていく。
「えーっとね、スイカと、トウモロコシ、あとは梨かなあ」
「他にもねえ、細々とした掘り出し物が多いの」
由紀は、そんな美智子を見て、少々驚くけれど、産直市には興味があるようだ。
「そうだね、これが地産地消なんだよね」
「地域で作った新鮮なものを、食べる」
その由紀がフンフンと頷きながら、産直市店内に入っていくと、美智子がスッと買い物かごをカートに乗せて、由紀に差し出す。
否応なくカートを引くことになった由紀にはお構いなく、美智子は野菜などの物色を始めた。
「あらーーー・・・すごく新鮮で安いなあ」
「スーパーより安いかも、この天候不順な時期にいいなあ」
「トウモロコシもいいなあ」
「スイカも・・・トントン・・・いい音をしている」
美智子は、スイカをトントンと叩いて、音を確かめている。
由紀には、その動きがわからなかった。
その由紀に美智子
「あのね、スイカを叩いて、高い音がするほうを選ぶの」
「それが基本」
由紀が「へえ・・・」となっていると、美智子がまた一言。
「あのね、由紀」
「作法の勉強をするのもいいけれどね」
「それ以前に、お野菜とか、果物についても学ばないといけない」
由紀は、素直だった。
「それも、ごもっともな話だ」
「何も知らないで清さんに呆れられても恥ずかしい」
次に美智子は、枝豆を買っている。
そして由紀に
「午前中に畑から収穫したばかりの枝豆だよ」
「これを塩茹でして食べるのが一番美味しい」
由紀は、それで納得した。
今まで、家で食べていた枝豆の甘さと、大学のコンパで食べる枝豆とは、全然味が違っていたことの原因を理解した。
そして更に
「ここの産直に少し通うことにする、これも作法に負けず劣らずの勉強になる」
と思ったので、次からの産直市での買い物は、必ず由紀が付き添うことになった。




