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カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
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パワハラ上司と部下、そしてマスター(1)

午後10時過ぎ、カフェ・ルミエールに二人のサラリーマン風男性客が来店した。

一人は、いかにも精悍そのもの、年齢は50代前半。

もう一人は、少し疲れ気味、年齢は20代後半だろうか。


美幸が「いらっしゃいませ」と二人に声をかけるけれど、両方ともほとんど応答がない。

かろうじて、若い方のサラリーマンが頷いた程度。


さて、席に着くなり、精悍な50代前半のサラリーマンが若いサラリーマンに対して、説教をはじめた。

「いいか?俺たちの時代は、夜討ち朝駆けが当たり前」

「土日も祝日も関係ない」

「わが社の業績向上めざして、死にもの狂いで仕事して全国を駆け回ったんだ」

「それがあって、今のわが社があるんだ、それはわかっているよな」


若いサラリーマンは、

「ええ」「はい」

というばかり、下を向いて全く言葉を出せない。

どうやら部長クラスのサラリーマンと、平かせいぜい係長程度なのだろうか。


そのおそらく上役のサラリーマンが、また説教を続けた。

「それが何だ?労働時間規制だなんだって、ふざけんなって言いたいんだ」

「いいか?ロクな業績もあげられないのにな、下らんこと抜かしやがって」

「そもそもな、業績あげられない社員なんて、ただ飯ぐらいだぞ」

「いいか?お前たちは、おれら営業部の稼ぎで食っているだけだぞ」

・・・・・

延々と、お説教が続く。


マスターは、途中から予想がついた。

「おそらく年取ったほうは営業部」

「若い方は、総務部系のおそらく人事労務管理かな」

「残業かなんかで、意見でもしたんだろう」

「それで逆切れされて、責められているパターンかな」


美幸も、そのサラリーマン二人のやり取りが気になって仕方がない。

「誰かが言っていたけれど、日本人って時間に正確ってのは、間違いらしいんです」


マスターが美幸の顔を見ると、美幸は話を続けた。

「つまり、出勤時間は少し遅れても、重大な問題」

「でも、退社時間は、全くルーズ、制限なし」


マスターも、その意見には頷いた。

「そうだね、長時間労働が美徳って、そういう雰囲気を持つ会社も多いね」

「それと、利益至上主義、コンプライアンス軽視、滅私奉公を要求する会社」

そんなことを言いながら、マスターもサラリーマン二人のやり取りを注視している。


それでも、若い方のサラリーマンがようやく口を開いた。

「部長、そう言われましても、総務には総務の立場、人事には人事の立場があるんです」


ただ、その「部長」は、全く納得できないらしい。

少しずつ、顔が赤らんでいる。

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