マスターの縁結び(2)
亜美は、カフェ・ルミエールの帰り際に、マスターから連絡先を尋ねられた。
マスターが言うのには
「決して、悪いようにはしない、だから俺を信じて待っていてくれ」
だった。
亜美としては、自分から「事情」を話してしまった以上、「はい、わかりました」というしかないと思った。
マスターの話の意味、美幸にささやかれた「きっと良縁」と言う言葉にも、正直、期待してしまった。
そんなことで、最初は落ち込んでカフェ・ルミエールに入った亜美ではあるけれど、帰る時には不思議な感覚とほのかな期待に包まれていたのであった。
さて、その亜美に連絡が入ったのは、三日後だった。
連絡してきたのは、美幸。
「お差支えなかったら、亜美様にご来店願いたいのです」
「お時間は、亜美様のご都合の良い時間で」
それを聞いた亜美の心の中に、「きっと良縁」「マスターの考えなら大丈夫」が飛びまわる。
二つ返事で、
「はい、今日の午後八時に伺います」
全然、不安は感じなかった。
むしろ、いつにも増して、明るい声。
自分でも、ちょっと恥ずかしいほどの声だった。
さて、カフェ・ルミエールの二階では、すでに京極華蓮が「文化講座」の事務局を、当初は二人のスタッフでということで、立ち上げている。
そして、そのもう一人のスタッフは、大旦那の財団から出向した、大卒二年目の久我道彦。
大旦那に財団に勤めているので、基本的には大旦那の一族に入るけれど、少し緊張気味になっている。
華蓮が、そんな道彦を、すこしからかう。
「道彦君、顔が少し赤いよ、どうかしたの?」
道彦は、その色白の顔が確かに赤くなっている。
「それは・・・不安なんです、僕だって」
「それに、今日突然、会って欲しい人がいるって、マスターから言われて・・・」
華蓮は、そんな道彦が面白い。
「そんなね、道彦君、それは道彦君にも一因があるんだよ」
「ねえ・・・あの時にね・・・」
「あんなことがあって、私も呆れちゃったもの」
「マスターも、しっかり見ていたんだよ、それでかなあ・・・」
道彦の顔は、ますます赤くなった。
そして、マスターからの言葉も思い出している。
「あとは、道彦君しだいだ」
それでも、道彦は不安。
「でもねえ・・・そんな急に、彼女だって覚えているかどうか・・・」
顔を下に向けている。
さて、いったい、何があったのだろうか。




