カフェ・ルミエールの広報誌(3)
なんだかんだと、珍しくドタバタしながら、洋子と史は、カフェ・ルミエールに到着した。
そして、洋子は、やっとホッとした。
「うん、これで、史君のインタヴューを受けることが出来るぞ」
「今日のケーキは早起きして作ってあるし、もう少しすると奈津美ちゃんが来るな」
「よしよし、やっと落ち着いて史君と、インタヴューデートだ」
インタヴューがどうしてデートにまで発展するのかわからないけれど、洋子の心は舞い上がってしまっている。
「それでね、洋子さん、広報誌と言っても、いろいろなスタイルがあるのですが・・・」
「それから決めませんか?」
その史の冷静な話し方がちょっと面倒だけれど、洋子もこれには応えなければならない。
「うーん、どうでもいい、史君とお話できれば」なんてことは、絶対に言えないから、洋子も少しは考える。
「そうだねえ、店のメニュー、メンバー、ブログとか」
「顔写真もいるよね、きれいに撮れた写真探さなきゃ」
・・・「月並み」なことしか、言えないけれど、史は持参ノートに本当にきれいな字で書いていく。
「すっごいねえ、書道の先生みたいで、見ているだけできれいだ」
「あの字で、洋子って書いてもらいたいなあ」
「あらら、私、お花畑かも・・・なんか幸せだ」
洋子は、よくわからないことまで、考えている。
「そうなると、これからメニューの写真撮ったり、メンバーの写真、経歴」
「お店の写真も撮るかなあ」
「それからブログまで書くってことですが、誰が書きます?」
頭がお花畑状態になっている洋子はともかく、史は全く冷静である。
「それでさ、史君、私のインタヴューは?」
とうとう洋子は、待ちきれなくなってしまった。
ハシタナイとは思ったけれど、自分からインタヴューを催促してしまったのである。
「えっと・・・それは、もうちょっと・・・広報誌の体裁が固まってから・・・」
しかし、またしても史の冷静な返答である。
洋子にとって、史は本当にじれったい。
しかし、そう思いながら、史の表情や一つ一つの仕草から、全く目が離せなくなっている。




