由紀の読書 中世の食べ物(2)
由紀の目は、史から渡された本から離れることがない。
とにかく、室町の元将軍と山口大内氏の献立が面白くて仕方がない。
「かまぼこ・・・へえ・・・」
「さざえ盛りこぼし・・・美味しそう」
「鮒丸煎め入?また鮒かあ・・・鮒が多い」
「つのまた・・・海草の一種か」
「コウノトリの生鳥?マジ?どうやって食べるの?」
「スズキのお刺身、あわび、ひしお煎は雉などの身を焼き、水で伸ばして味噌汁に?へえ・・・恐れ入っちゃう」
「とっさか?これも海草の一種、海草にも一々名前があったんだ、なんにも知らないや」
「まんじゅう・・・この時代にもまんじゅうがあったんだ」
「小串さし鯛、名前だけで美味しそう」
「かせって何?むむ・・・紫うにかあ・・・メチャ・・・グルメだなあ」
「はらかは、鱒?それの煎物・・・すごいなあ」
由紀は、ここまで読んでようやく、目を飲み物に向けた。
「ふう・・・ほうじ茶美味しい」
「こんな料理、京都の大旦那のお屋敷でも、めったに見ない」
「それに、ここで、ようやく半分だよ、どれだけ食べたの?当時の将軍と大貴族って・・・」
「でも、ここまで読んだら最後まで行こう」
と思ったので、本を読み進める。
「鶴の煎物?鶴を食べちゃうの?可哀想」
「大根・・・へえ・・・蒸麦、うずら」
「ブリのお刺身、はまぐり、鮎の煎物」
「岩茸、うんぜんかり?よくわからない、牡蠣はわかる」
「つべたは貝の一種、くるくる?鱈の腸の塩辛かあ・・・お酒のおつまみだね」
「やまぶき煎は、素材に卵黄を塗って焼いたもの、何となくわかる」
「鳥の足、海老羹、ぶりこ」
「くらげ、まて貝、えいの煎物」
「ハスはわかる、羽羊羹は、羊羹を羽の形にか、それと、ホヤ?ホヤも多い」
「小串さし雁、からすみ・・・これもグルメだ、鱈の煎物」
「コチの刺身、いいだこ、のりからみは不詳って書いてある」
ここまで読んで、由紀は疲れてしまった。
とにかく、料理の種類が多い。
確かに面白いと思うけれど、今の食生活との差も実感する。
「あまり、油を使っていない気がする」
「素材を活かす料理かなあ」
「鯉とかホヤが多いけれど、今はあまり食べない」
「いいとか悪いとか、言えないけれど」
そこまで考えて、由紀は眠くなってきた。
「いいや、今日はここまで、寝ることにしよう」
「明日は、史にごほうびとして、頭でもナデナデしてあげよう」
「うん、それこそ、姉のつとめだ」
由紀は、眠さのあまり、訳の分からないことまで、考えている。




