由紀の読書 中世の食べ物(1)
由紀は、史から思いがけなく渡された「信長のおもてなし」という本を読んでいる。
そして、華蓮が家にいる時よりは、ご機嫌である。
「ふむふむ、史にしては、気がきいている」
「やっと成長したか、よしよし、この本を読めば、清さんも確かに私に一目置くかも知れない」
「それほど、難しい本ではないけれど・・・」
と、読み進める。
その由紀の目が、室町の将軍だった足利義稙が山口の大内氏を訪問した日の記述で止まった。
「ふむ、その時の献立か・・・細かい部分は抜きにして、何を食べていたのかな」
「雑煮、へえ、雑煮ってあったんだ」
「さしみ鯉子付き?鯉の身の細切りに加熱した鯉の子をまぶしたもの」
「えび舟盛り、ちぢみアワビ?豪勢だなあ・・・」
「たこ、鯉の煎物・・・鯉が多いなあ」
「鯛の焼き物、鯛は確かに美味しい」
「せわた、鮒なます、干鯛、子うるか・・・なんかグルメだなあ・・・」
由紀は、驚いてしまった。
まだまだ、料理が続くのである。
「鳥の焼物、鯉、さしみ鯛、御汁」
「かまぼこ、数の子、雁の皮煎、貝アワビ、たこの味噌焼き?美味しそう」
「魚の煮凝こごり、白魚、雁の焼物、くらげ、ホヤの冷や汁?・・・へえ・・・」
「鮒焼ひたし」
「ふと煮?干しなまこやゴボウや人参を太いまま煮るのか」
「いるか御汁?いるかを食べたの?」
由紀は驚きを隠せない。
「めちゃくちゃ、グルメ、現代の宴会でも、そこまで出ない」
「これはお菓子?けずり栗、昆布?昆布はお菓子だったんだ」
「みかん・・・へえ・・・わかりやすい」
「山芋もお菓子なんだ・・・」
「飴?飴もあったんだ」
「串柿、くるみ、のり」
「さざえ盛りこぼし・・・」
ただ、料理の献立は、これでも半分も満たない。
由紀は思った。
「すごい本だし、メニューもすごいなあ」
「史にしては、タメになる本を持っている」
「こうなったら、ずっと持っていて、史には返さないようにしよう」
由紀は、史から渡された本から、目が離せなくなっている。




