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カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
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マスターの不安と安堵

ようやく、午後6時、カフェ・ルミエール喫茶部の営業初日が終わった。

何しろ、史の通う学園の生徒や教師、地域の人々まで、ひっきりなしに来店した。

全56席も、常に満席状態、繁忙を極めた状態が続いたのである。


「ふう・・・洋子さん、ありがとう」

マスターは、パテシィエにして、喫茶部チーフの洋子に、ねぎらいの言葉をかけた。

「いえいえ、これほどケーキとかお菓子を売ったのは初めてで、楽しかった」

洋子も、目一杯動いたせいか、顔が上気している。

マスターの妻、涼子もやっと椅子に腰をおろした。

「うん、あのアルバイトの二人がよく働いてくれたし、助かったなあ」

「若いっていいねえ」


その言葉には、マスターも洋子も納得らしく頷いている。


「ただね、心配なのは史君なの」

洋子がマスターの顔を見た。

マスターもわかっていたらしい。

「ああ、客の前では、ニコニコしていたけれど、痛そうだった、ちょっと心配だな」

涼子も同じ考えのようである。

「何しろ、足首だからさ、しっかりなおさないといけない」

洋子も顔を曇らせた。

「それは珈琲を淹れるのが上手とか、史君の人気で客が増えるってこととは、関係ないね、下手をすると一生に関わる」

マスターは、ため息をついた。

「それで、頑張ってしまうのが史君なんだなあ・・・それは困るなあ」


そんな話を三人でしていると、店に電話がかかってきた。

「はい、カフェ・ルミエールです」

涼子が電話を取ると

「今日はありがとうございました。史です」

史からの電話だった。

マスターが、涼子から受話器を受け取った。

「ああ、史君、こちらこそ、ありがとう。それより足首はどうだ、痛くはないか?」

マスターは、みんなの不安を直接伝えた。


「はい、多少は痛むけれど、大丈夫です、心配には及びません」

「それから、姉がちょっとお願いがあるそうです」

史から姉に変わった。


「はい、マスター、由紀です、お久しぶりです」

「今度、史君と一緒にアルバイトしたいけど、どうでしょうか」

「それから、私の合唱部仲間もアルバイトしたいし、歌とか音楽をしたいって言っていますけれど」


マスターは、すぐに承諾した。

そして、ホッとした。

「ああ、由紀ちゃんは、そもそも史君の珈琲と紅茶の指導者さ」


涼子は、うれしそうな顔になった。

「うん、由紀ちゃんは、何より可愛いし、ハキハキして気持ちがいい」

「合唱部のみんなが手伝ってくれると、大助かりだね」


洋子は、少し別のことを言った。

「お姉さんの由紀さんとしては、帰って来た史君の状態に不安を感じたのかな」

「それで、手助けをしようとって、ことかな」


マスターも涼子も、その意見には頷いた。

「これで、史君の負担も減る、まあ、ひどいことにはならないだろう」

「もっと上手な医者を・・・」

マスターがそこまで話すと、涼子がすぐに電話をかけている。


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