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カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
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由紀と清さん(8)

マスターも、史の言ったことには気がついていた。

「お屋敷の水は、ここと甘味が違う、あくまでも関東の水」

「それに、三つ葉も、築地に出ていた関東産」

「それならば、味が全然違ってくる」


大旦那は腕を組んだ。

難しい顔になっている。

「あくまでも京都の屋敷の味をと思っていたけれど、そのままでは通用しない」

「やはり、関東だし、ここの水と産物に合わせた中で、考えないと」


洋子も難しい顔。

「特に繊細な旨みが要求される和食ならではの問題ですね」

奈津美は、困った顔。

「清さんも、洋子さんも、完璧すぎる仕事だったのに、水と、そもそもの素材ですか、清さんも、朝早くから築地でいいものを仕入れてきたのに」


清は、少々ガッカリ顔。

「自分でも、今口に入れてみたんですが、かなり違いますね」

肩を落としている。


由紀は、そんな清がかなり不安。

「大丈夫だよ、清さん、かなり美味しいって」

「少なくとも、こっちで食べる海老しんじょとは、天と地の違いがあるし」

そう言って、必死に清をかばう。

そして、黙って何かを考え込んでいるだけの史が気に入らない。

気に入らないついでに、脇をつついたりもする。


史は、そんな由紀にうるさそうな顔。

少し身体をずらしたりする。


それでも、史がようやく口を開いた。

「ところでさ、清さん」


清が、史を見る。

まるで、何を言うのか予想できない様子。


史は、静かな口調。

「ここで、京都のお屋敷の味を再現しようとしても、仕方がないと思う」

「そうなると、まがいものになると思うんです」

「ちょっと厳しい言い方だけど」


由紀は、ムッとして史をつつくけれど、大旦那、マスター、洋子、奈津美も頷いている。


史は、言葉を続けた。

「京都のお屋敷の味を再現するのではなくて、関東の水と関東の素材で、お屋敷の技術をベースにして、美味しい料理を作るべきというか」

「僕の立場で、偉そうなんですけれど」


清は、その史の言葉に、深く頷く。

「そうですね、さすが史お坊ちゃまです、私もお屋敷の味にこだわり過ぎました」

そして、史に頭を下げた。

「坊ちゃまにも、時々助言をお願いしたかったんです」

「ただ、お忙しそうなので、ためらってしまって」


史は、すまなそうな顔。

「ほんと、ごめんなさい、何か言い過ぎた気がします」

「しっかり手伝えるわけでもないのに、出すぎたことを言ってしまって」


由紀は、そんなことを言って顔を下に向けた史に、また腹が立った。

そして、我慢できなかった。

「史!そこまで言うんだったら、お手伝いしなさい!」

そこで、史が「え?」となった顔を見ることもなく、清に

「清さん!困った時は、姉の権限で史を連れてきます!」

「文句を言っても、首根っこ掴んでも連れてきます」


史は、ムッとした顔。

史以外は、全員が大笑いになっている。


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