表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
473/760

大旦那の提案(1)

午後8時、カフェ・ルミエールはいつもの静かな雰囲気。

席も固定客でほぼ、埋まっており、アシスタントの美幸も仕事に慣れ、スムーズに接客もこなしている。


マスターがそんな美幸を目を細めて眺めていると、店の扉がゆっくりと開けられた。


マスターは、思わずドアから現れた主を見て、にっこり。

「おや、珍しい」


美幸も、すぐに気がついた。

「あら、大旦那様、いらっしゃいませ」

「カウンターになさいますか?」

さっと、大旦那の手を引き、カウンター前に案内する。


大旦那は、マスターより、まず美幸に微笑む。

「ああ、ありがとう、いい娘さんだ」

「気が利いていて、私の知りあいからも、評判が良くてね」

大旦那から、そんなお褒めの言葉をいただいた美幸は、顔を真っ赤にしている。


さて、美幸の案内で、カウンター前の席に座った大旦那は、「コホン」とまず、咳払い、何かマスターに話がある様子。


マスターは、フッと笑い

「じゃあ、トワイスアップをおつくりしましょうね、美幸に作らせましょうか?」

と言うと、軽く頷く。

大旦那は、実は話の本題に早く入りたい様子だったけれど、マスターにそう言われて、美幸の笑顔で見つめられると、なかなか話を始められない。


ただ、大旦那も、美幸の作ったトワイスアップを飲みたくなったらしい。

トワイスアップをが、自分の前に差し出されてから、ようやく話をはじめた。


「ここのビルの改装計画を考えているんだ」

「もちろん、ここの店と地下ホールは変えない」

「ただ、有効に使えていない部分があるから、それをもう少し有効に使いたい」


マスターは腕を組んだ。

「具体的には、どんな感じで?」

「もちろん、ここの店は区分所有で俺の持ち物ですが、全体は大旦那の持ち物なんで、文句を言うこともないのですが」


すると大旦那

「ああ、2階の改装をまず、今は我が家の私財とかと置いてあるけれど、もっと地域とか社会に貢献するものにしたいんだ」

と、まで話して、少し間を置いた。


「具体的には、懐石の店を作りたい、そして日本料理の技術を伝える拠点にしたい」大旦那の目の光が強くなった。


そして、美幸の顔をチラリと見て、

「こういう若い人にも、日本料理の本当の技術を教えたいんだ」

「マスターとか洋子さんの西洋料理とかケーキも、素晴らしく人を感動させるものがある」

「しかし、その中で、日本人として、忘れてはいけない技術とか、料理の心が失われているのでないか」

「その思いが、最近本当に強くなってきたんだ」


大旦那の口調は、次第に熱を帯びてきている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ