三年生になった史と里奈のデート(6)
史と里奈は、自由が丘の街を、数ある雑貨店の中で、里奈が「どうしてもここ」という店に入った。
里奈は
「ここのお店は、自由が丘の生活雑貨店の草分け的存在なの」
「食器やインテリア小物などが、素敵」
どうやら、事前にネットなどで調べていたらしい。
史は、フンフンと頷きながら
「シックで、落ちついたお店だね」
「それぞれの商品の質が高いし、値段もお手頃かなあ」
と、店内を見ている。
そんな史が、木彫りの猫の人形を見つけた。
「へえ、ヴァイオリンを持ったり、チェロを持ったり、クラリネットを持ったりしている、面白そう」
見るだけでなくて、手に取って、面白そうな顔。
里奈も、史のそんな様子を見て
「うん、可愛いなあ、つい欲しくなるよね」
目を細めている。
すると史の行動は速かった。
「じゃあ、僕がチェロで里奈ちゃんがヴァイオリンってどう?」
さっそく「お買い上げ」モードになっている。
里奈は、プッと吹きだしてしまった。
「なんか面白いけれど、そうしよう、柔道着よりはオシャレだ」
と、さっそく史と一緒に猫の人形を買っている。
史は、
「ところで、お土産とかも買うのかな」
「家には大福だね」
里奈は、少し考えていることがあるようだ。
「うーん・・・午後でいいかな、その前にお昼」
「お目当てのお店があるの」
史は
「へえ・・・何の料理?」
と、興味深そう。
里奈は、そこでニッコリ。
「えっとね、イタリア料理なんだけど、フォアグラのリゾットを出しているの」
「これもネットで調べたんだけどね」
そこまで言って、今度は史の腕を組んでしまう。
史は、そこで顔を赤くするけれど
「わかった、言ってみよう、食べたことない」
「急にお腹減って来たなあ」
と、にっこり。
里奈は、その史の笑顔が、本当にうれしい。
「じゃあ、お昼はそこね、それからカフェもいろいろ考えてあるから」
と、史を引きずるようにして歩き出した。
どうやら今回の自由が丘デートは、ほとんど里奈の計画コースになるようである。




