東京駅でお見送り、そしてマスターの家に
神田明神大鳥居横の甘味屋で甘酒を飲み、少し店でお土産を買った一行は、御茶ノ水駅から中央線に乗り、東京駅へ向かう。
ただ、中央線に乗ったといっても、所要時間は4分。
あっという間についてしまった。
東京駅構内で、史が愛華と加奈子に声をかけた。
「改札口で見送ります」
愛華と加奈子は、その言葉で、涙顔。
愛華
「その言葉、聞きとうなかった」
加奈子
「一緒に京都に行こう」
となるけれど、結局は新幹線改札口で見送ることになった。
由紀も、京都に帰る二人に声をかけた。
「本当にいろいろあったけれど、来てくれてありがとう」
「また、私たちも関西に行く時には、よろしく」
史も
「京都と奈良には行きたい場所があるので、その時に」
と頭を下げる。
愛華と加奈子は、ますますウルウル顔。
愛華は
「うん、それで明日への希望ができた・・・でも寂しい」
加奈子は
「ふたりとも、元気でな・・・また涙が出てきてしもうた」
ただ、改札前で、いつまでもそうはしてはいられない。
愛華と加奈子は、深く頭を下げ、改札口を通り過ぎ、一旦手を大きく振って、出発ホームに向かっていった。
二人の姿が見えなくなったところで、由紀と史は、大きなため息。
由紀
「寂しいけれど、疲れた部分もある」
史は、竜との一件を思い出した。
「竜のことがなければ、スンナリだったのに」
由紀も竜のことが気にかかっていたようだ。
「ねえ、あいつどうする?史」
史は
「うん、始末はつけないといけないけれど、考えるだけでもイライラするから考えないようにしていた」
由紀
「竜も、竜の親父も、被害にあった史のことなんて、何も考えていない、自分の保身と商売だけだね」
史
「直接話をしないほうがいいのかな、代理人を立てるとか」
由紀
「大旦那に言うと、また大事になるね」
史
「マスターに頼むかなあ、事情がわかっているから」
由紀も、それには賛成する。
「そうだね、これから行ってみようか」
史も頷いた。
「行こう、連絡する」
そして史がメールを打つと、即返信が来た。
史
「マスター、了解だって」
由紀
「何か手土産あるかなあ、ここで買っていく?」
由紀は手土産を心配するけれど、史は首を横に振る。
「姉貴、さっきの甘味屋で余分に甘酒の素を買った、それを持っていく」
由紀は、そこで史に感心した。
「ほーー・・・珍しく史は気がきくなあ、考えもしなかった」
ただ、それでは少ないと思ったようだ。
売店で、バームクーヘンを買っている。




