史はお子ちゃま?
史たちの一行は、カフェ・ルミエールを出て、涼子の車で大旦那のお屋敷に戻った。
史たちは、大旦那のお屋敷で夕食をとることになるけれど、涼子はそのまま、自分のアパートに帰ることになる。
ただ、それが大旦那には、辛いことのようだ。
「涼子さんも、祥子ちゃんも一緒に食べられたらいいのにねえ」
「ほんとうに、祥子ちゃんは天使のように愛らしい」
とにかく、祥子を見ながら、その目がウルウルしている。
そんな大旦那に奥様が、困った顔。
「ねえ、涼子さん、ごめんなさい」
「まだ、祥子ちゃんは離乳食なのよ、それにお出かけしたんだから、お家に戻って寝ないと、いけないの」
「寝る子は育つって言うでしょう」
奥様が、とにかく大旦那を必死になだめて、ようやく涼子と祥子は、自分のアパートに戻ることができた。
大旦那と奥様の、そんな様子をクスクス笑いながら見ていた史が、やっと入ったリビングで大旦那に声をかけた。
「じいさま、銀座と日本橋人形町に行ってまいりました」
「お目当てのものも」
と言って、ロクムと人形焼を大旦那に渡す。
すると、涙ウルウルの大旦那の顔が、一変。
「ほーーーー!人形焼だけでなくて、ロクムかあ!」
「これはこれは、格好の食後の茶菓子だなあ」
「史君!ありがとう」
とにかく、大ニコニコ顔になった。
ついでに、史の手をガッシリと握っている。
その大旦那の一変を見た、奥様が
「全く、甘いものに目がなくて」
「それから、大の子供好き」
「よくわからないけれど、甘党のくせに大酒飲みでねえ」
と言うので、愛華、加奈子、由紀も、笑いをこらえきれない。
そんな話をしていると、お屋敷の執事が、緑茶と干菓子を持ってきた。
史が、即反応した。
「わ!玉露と、京都の和三盆だあ」
史も、途端に大ニコニコ顔になる。
その史を見て愛華
「わぁ、史君のニコニコ顔って可愛いなあ、ずっと見ていたい」
と、史に少しずつ、すり寄る。
加奈子は、少し慌てる。
「う・・・愛華ちゃん、また攻勢をかける?大旦那と奥様の前で?」
由紀は、もはやどうにもならない。
「これは、なるようにしかならないかも、それより史の甘いもの好きと子供好きは、大旦那の遺伝かなあ、まあ、史そのものが、お子ちゃまだけど」
ただ、史は愛華の「すり寄り」は、何も感じていない様子。
大旦那と奥様と、銀座のお香の店の話をはじめ、その後は源氏物語のお香の話に熱中している。




