銀座、日本橋散歩(9)
岡村顧問が、史に目で合図、そして史は「バッハ=グノーのアヴェ・マリア」の前奏を弾きはじめた。
すると、やはり名曲、聞き慣れたメロデイと美しい合唱が来店客の耳をひきつけ、ステージ前には、かなりの聴衆が集まってきた。
「いやーーーきれいだなあ」
「癒やされる」
「ハーモニーが完璧」
「ピアノの伴奏がなめらかで」
「一緒に歌いたくなってきた」
中には、一緒に口ずさむ客も出てきている。
「バッハ=グノーのアヴェ・マリア」の演奏が終わると、ものすごい拍手。
見るからに、かなり多くの聴衆が集まっている。
楽器店の中だけではない、楽器店の外を歩いていた買い物客たちも、音楽を聞きつけて入ってきているようだ。
岡村顧問が、簡単に自分たちを紹介する。
「私たちは、音楽、そして合唱を愛する仲間です、ご存知の方もあるかもしれません」
特に具体的な学校名は出さないものの、聴衆の中には気づいた人もいるらしい。
「もしかして、去年の高校合唱コンクールの優勝校?」
「あの大人の人は、オペラ歌手の岡村さんだから、そうだと思う」
「あのピアノを弾いている男の子は・・・あ・・・史君だ」
「中学ピアノコンクール都内一位、でも全国大会は棄権した」
「うん、インフルエンザだったって・・・」
そんなヒソヒソ話をされるなか、二曲目が始まった。
二曲目は、モーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」。
これも史の前奏に続いて、美しいメロデイとハーモニーが響き始める。
「う・・・天国?」
「はぁ・・・力が抜けた、お花畑かな」
「なんか、涙がでるほどきれい」
「ここに来てよかった、はぁ・・・」
それ以外には、何も声がでない。
とにかく全員が聴き入っている。
しかし「アヴェ・ヴェルム・コルプス」は、短い曲、すぐに終わってしまう。
そして、一曲目以上の拍手を浴び、すぐに「アンコール」の声がかかってしまった。
岡村顧問は、聴衆に
「アンコールありがとうございます」
「ここの店の都合もありますので、最後の曲とします」
と、お辞儀、そして史と合唱メンバーに目で合図。
史は、ニッコリと頷き、「ジャズ、合唱バージョンのタキシード・ジャンクション」の前奏を弾き始めた。




