洋子とひとみ(2)
「それでも、今は午後の5時、夜の部というか、マスターと涼子さんが店に来るのは30分ぐらい後だよ、ここで待つ?」
洋子は、ひとみに尋ねた。
もちろん、ひとみが、「待つ」ことは、想定している。
洋子も、うれしそうな顔になった。
「そうかあ・・・マスターも涼子さんも・・・もうすぐ来るんだ」
「懐かしいなあ・・・あの二人」
そんな話を二人でしていると、キッチンから奈津美が顔を出した。
「それでは、この空き時間に」
お盆の上に、小麦饅頭と、ほうじ茶が入った湯飲茶碗を乗せている。
「うん、気が利く、さすが奈津美ちゃんだ」
「これって?奈津美ちゃんの木村親方の?」ひとみ
洋子とひとみは、すぐに気づいた。
「はい、私の店のものですが、洋子さんとひとみさんがお話している時に、届けてもらいました」
奈津美は、にっこりと笑っている。
「それでは、早速・・・」洋子
「うん、まさかと思ったけれど」ひとみ
二人は、早速食べ始めた。
「うん・・・饅頭の皮も、餡もいいなあ、品がある」洋子
「ほうじ茶とベストマッチだね」ひとみ
「ありがとうございます、よろこんでいただいて」
奈津美は、うれしそうな顔である。
そして、言葉を付け加えた。
「それで、これは今日の朝、私が作ったんです」
「だから、持って来てもらったんです」
「へえ・・・いい腕だねえ」洋子
「もう少し食べたいなあ」ひとみ
「あ・・・はい・・・あと4個ありますが・・・」
キッチンに奈津美が戻ろうとすると、カフェ・ルミエールの扉が開いた。
マスターと涼子が入って来る。
「あ、マスター!涼子さん!お久しぶりです!」
ひとみは、弾かれたように立ち上がって、二人に挨拶。
「ほーーー!ひとみちゃんか!きれいになったなあ!」マスター
「うん、大人びたねえ!逢えてうれしい!」涼子
マスターと涼子、ひとみは抱き合って再会を喜んだ。
「少しお話があるってことなので」
洋子がマスターと涼子にウィンク。
「うん、それで、美味しいものがあるの?」マスター
「あ、お饅頭だ!美味しそう・・・」涼子
マスターと涼子は、すぐにお饅頭に気づいた。
「それでも、4個しか残っていません・・・」
奈津美が、正直に言うと
「そうなると、女性限定にしよう!」
「マスターは残念だねえ」
涼子が言うと、女性たちは大喜び。
マスターは、口を「への字」にしている。




