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カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
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由紀の部長昇格(4)

榊原は、さらに音楽講師を責めた。

「お前みたいな、元プロが昔の名前にしがみついて、無神経でゴーマンで暴力的な指導をするから、クラシック音楽が嫌われるんだ」

「自分自身でたいした演奏も出来ず、若い頃だけだろ?仲間がいたのは」

「仲間だって、お前の自分勝手な演奏に嫌気がさして、どんどん離れてしまった」

「ソロをやらせれば、ガチャガチャ力任せに弾いているだけで、音楽として何も面白くない」

「そうかといって、アンサンブルをやらせても、周りの音とか呼吸を読まないから、音楽そのものがグチャグチャになる、だからお前と組む演奏家はいなくなった」

榊原の指摘は、事実らしい。

音楽講師は、ガックリと肩を落とした。


岡村も続いた。

「ああ、君の伴奏では、絶対に歌いたくなかった」

「僕の仲間が君の伴奏で歌って、本当に苦労したのを見たことがある」

「リズムもテンポもダイナミックスも、打ち合わせを違うことを本番でやってしまうんだろ?それで文句を言っても謝らない」

「何しろ、歌手より伴奏のほうが、音が大きいなんてありえる?」

「どうして、周りを活かす音楽が出来ないんだ!」


最後に、おそらく新しい就職先の関係らしい、田中が断を下した。

「あなたの採用は、取りやめにします」

「まだ正式に採用契約もありませんので」


その言葉が決定的だった。

音楽講師は、これ以上は、音楽室に残ることはできなかった。

合唱部をそのままにして、学園自体から、うなだれ姿を消したのである。




「ありがとうございます、いろいろ」

由紀は、カフェ・ルミエールに合唱部の全員を連れてお礼に来た。

学園長や、榊原、岡村の姿も見える。


「いえいえ・・・スッキリした?」

洋子もうれしそうである。


「はい、あの音楽講師が、フラフラになっていなくなって」

「そのまま、榊原先生と岡村先生に指導してもらいました」

「もうね、全然違っていて、練習して感激です」

由紀の顔が、真っ赤である。

どうやら、心の底から感激しているようだ。


「私も安心しました、マスターに話ししたらすぐに連絡してくれて」

洋子は、榊原と岡村に頭を下げた。


「いやいや、マスターに頼まれたたら、仕方ないさ」

「というよりは、あの音楽講師がひどすぎる」

「ああいう奴は、大勢の前で恥をかかせないと、わからないのさ」

「本当はしたくないけどな」

榊原は、そこでウィンク。


「生徒たちの声もね、心を開けば声帯も開く」

「その根本を教えられないようでは、声楽の指導はできない」

「あとは、僕にまかせてくれ」

どうやら岡村が、合唱部の指導をするようである。


「本当に助かります、こんな高名な先生に指導をしていただけるなんて」

学園長は、ほぼ恐縮している。


「いやいや・・・気にすることはないさ、それで合唱部の生徒をまとめるのは、由紀ちゃんが部長だからいいとして・・・史君はまだかい?」

榊原は由紀の顔を見た。


「えっと・・・まだ・・・もう少し・・・歩けるまでは時間が」

由紀も、困っているようだ。


「まったくねえ・・・由紀ちゃんの半分でもいいから、元気が欲しいねえ」

洋子は、少し呆れている。

しかし、すぐに表情を変えた。


大きな声で全員に呼びかけた。


「みんな、由紀ちゃんの部長昇格お祝いパーティーをカフェ・ルミエールで開きます!」

「お菓子は、色とりどりのマカロン、たくさん作るから、みんな手伝って!」


由紀は、またしても顔が真っ赤。

そして、全員の拍手を浴びている。




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