史・由紀・愛華・加奈子の音大見学(8)
史は、大旦那との長い電話を終えて、少々ヘキエキ顔。
由紀も、マスターとの電話の後、「はぁーっ、疲れた」という顔。
そんな二人に愛華
「ねえ、後のことは、大騒ぎしている大旦那とか大人たちに任せて、レッスン室に行こう」
加奈子も
「ねえ、榊原先生と内田先生やろ?うちも憧れや」
と、声をかけ、歩きだす。
そして、ようやく、史たち四人が校舎に入り、廊下を歩きだすと、以前、史が音大に来た時に見かけた真衣が声をかけてきた。
真衣の周囲には、五、六人の女子大生も立っている。
真衣
「史君!大丈夫?ハラハラしちゃった」
史は、少し慌てた。
「あ、真衣さん、ご心配おかけしました、大したことはありません」
しかし、真衣は首を横に振る。
「そんなことないって!もう心配で心配でしょうがなかった」
真衣の目は、すでにウルウルとしている。
真衣の隣にいた女子大生からも声がかかった。
「警察に電話したの、あまりにもヒドイから」
他の女子大生たちからも声がかかる。
「史君に何かあったら、大変だもの」
「せっかくこの音大に来てくれるっていうのにさ」
「竜は、自業自得さ、何しろひどかったから」
・・・・
とにかく騒がれてしまって、史は困惑状態。
由紀は、思った。
「やはり史は女難だ、無神経なくせに女難だ」
加奈子は、群がる女子大生たちに、慌てた。
「すごい、お姉さんたちが群がってきた、これは危険かも」
愛華は、焦った。
「ほんと、これ・・・あかん・・・里奈って子ばかりやない」
「このお姉さんたち対策も必要やなあ」
「マジで、この音大を目指さないと、あかん」
そんな大騒ぎの状態の中、榊原先生と内田先生の顔が見えた。
史が、
「あ!すみません、ちょっとトラブルで」
と頭を下げると
榊原
「ああ、いいんだ、とにかく学長室に」
と言ってきた。
内田先生も
「このままじゃ、収拾がつかない、さっそく」
両先生の指示もあり、史たちの一行は学長室に向かうことになった。




