史・由紀・愛華・加奈子の音大見学(6)
今度は、加奈子が竜の前に立った。
そして、地面に崩れ落ちてしまった竜に厳しい言葉をかける。
「竜!私も怒った!」
「私も父に今日のことはしっかり報告させてもらう!」
「だいたいね、史君にあれほどの危険な行為をして、もう事故や!」
「史君のジャケットのボタン、壊したんやで!」
「その上、あなた大騒ぎして、史君と由紀ちゃんに土下座しろ?」
「ふざけんじゃないって!」
「土下座するのは、竜の方や!」
「それに、愛華ちゃんにあれほど言われて、まだ史君と由紀ちゃんに謝罪の一つもないって、どういうことや!」
「ああ、もう、うちも許さん!」
「あんたには、うちの家も一切協力しない!」
「もう、竜の顔なんぞ見たくもないわ!出入り禁止や!」
竜は、うろたえてしまって、全く何も出来ない状態。
また、集まってきた音大生たちも、騒ぎ出した。
「まさか・・・竜がこんなことになるなんて・・・」
「それに、竜にあれほど言える女の子二人って、誰?」
「で、史君が、大旦那とかの孫って何?」
「でもさ、あれで竜の表情が変わったよね」
・・・・
とにかく、異常事態に、全員が立ち止まっている。
突然、史が動いた。
愛華の目を見た。
そして
「愛華ちゃん、いいよ、こんな人、どうでもいい」
「もともと、興味がないし」
愛華は、史にクスッと笑った。
「そうやね、史君、断罪は断罪として、私たちは音大見学しようよ」
由紀は、また別の意見。
「とりあえず、ボタンの修理代請求したら?」
加奈子
「そうやね、まず酒気帯びやしなあ」
と酒気帯びのことを重要視する。
そして、誰かが、いつの間にか、警察に連絡していたらしい。
警察官が二名、キャンパスに入ってきた。
さっそく史たち一行と竜に事情聴取、実況検分にて、史のジャケットの欠けたボタン、アメ車の小さいけれど接触跡を確認。
史と竜の供述調書の作成も全くスムーズ、特に竜はうろたえてしまって何ら反論ができない。
そして警察官は、竜の酒気帯びをしっかりと確認。
竜は、そのまま警察官に連行されていった。




