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カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
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史、由紀、愛華、加奈子の音大見学(5)

革ジャン、リーゼント、そして今日は赤ら顔の竜は、史と由紀を見るなり、大声で怒鳴ってきた。


「おい!また来やがったのか!この貧乏くさいガキ!」

「この間、あれほど、お前たち貧乏人のガキが来る所じゃないって諭したのがわからないのか!」

「そもそもな、俺の車の音が聞こえたら、サッと道を開けろ!」

「それがルールってもんだ!」

「それにな!俺の車に、もう少しで傷がつくところだったじゃねえか!」

「いいか?傷がついたら、ちびたハシタ金じゃ直せないんだぞ!」

「お前らみたいな貧乏人じゃ無理って金なんだぞ!」

竜は、とにかくわめき続ける。


その竜に史はムッとした顔。

由紀も、顔を真っ赤にして怒る寸前。


そして、竜が怒っている様子が、キャンパスに響いているのか、少しずつ楽器を持った音大生たちが、心配そうな顔で集まってきた。


ただ、加奈子と愛華は、じっと竜の顔を見ている。


竜は、また騒いだ。

「おい!貧乏人のガキ!」

「目障りだ!」

「いいか!ここで、土下座しろ!」

「この俺に不愉快な思いをさせた罰だ!」

「俺が許すまで、土下座しろ!」

とにかく真っ赤な顔、息も少し酒臭いような気がする。


史は、本当に怒り顔になった。

「一体何です?あなたの言っていること、さっぱり意味不明です」

「それに、あなた、お酒飲んでませんか?」

「その息からスコッチみたいな匂いがしてくるんです・・・酒気帯びなんですか?」

由紀も、口を開こうと史の横に立った。

そして、由紀が

「あのねえ!あなたねえ!」

と言いかけた瞬間、

愛華が史の隣に立った。


そして愛華は

「ねえ、あなたって、竜?」

と、竜の名をいきなり口にした。


これには、史、由紀も「え?」という顔になる。

そもそも、愛華の口から「竜」という名前が出たことが理解できない。


愛華から自分の名前を呼ばれた竜は、一瞬たじろいだ。

そして、愛華の顔を見た。


途端に、竜の態度が、完全に変化した。

そして、言葉もシドロモドロになった。

「あ・・・もしかして、愛華様ですか・・・お久しぶりです、竜です・・・」

「どうして、今日はこちらに・・・」

さっきまでのゴーマン極まる態度は、皆無、それどころか、顔が青くなり、脚が震えているのが、傍目から見てもはっきりとわかる。


愛華の表情が、本当に厳しくなった。

そして、震えだした竜に

「竜!いったい何てことしてくれたの!」

「この史君は、私の大切な人なんだよ!」

「由紀ちゃんもそう、加奈子ちゃんもそうなの!」

「それに、貧乏くさいガキって、あなたね・・・何様のツモリ?」

竜は、愛華の言葉に目を丸くする。

しかし、次の言葉で、竜の態度は、一層激変する。


愛華は、厳しい顔で、言葉を続けた。

「竜!この史君と由紀ちゃんはね!」

「あの大旦那のお孫さんなの!」

「ねえ、意味わかる?」

「あなたの言ったこと、やってしまったこと!」

「史君だって、あなたの酒酔い運転で、ジャケットのボタン壊れちゃったんだよ!」

「警察呼ぼうか?」

「私が証人になる、うん、由紀ちゃんも、加奈子ちゃんもね!」

「それから、この話は大旦那にも、連絡するし、私の父にも連絡する!」

「もうね、絶対に許しません!」


愛華の厳しい顔と言葉で、竜はキャンパスに崩れ落ちてしまった。


そんな愛華と竜の様子に目を丸くしている史と由紀に、加奈子がささやいた。

「あのね、大旦那も、愛華ちゃんのお父様の雅仁様も、あの竜の財閥の筆頭株主なの」

「歴史的に言えば、竜の家なんて、家臣同然」

「史君とか由紀ちゃんは、東京に住んでいるから、わからないかもしれないけどね」

「京都のお屋敷に来る竜なんて、もう頭ペコペコなの」


史と由紀は、「へえ・・・」と言った顔。

とにかく驚いている状態になっている。

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