史、由紀、愛華、加奈子の音大見学(4)
とにかくアメ車ならではの爆音、それもブルン、ブルンと後ろから、史たち四人を煽るように聞こえてきた。
史は
「うるさいなあ」
と思って、振り返り、
「え?また?」
途端に嫌そうな顔になる。
由紀も振り返った。
そして、由紀も気がついた。
「うわ!またあいつ!」
由紀も嫌そうな顔になった瞬間。
そのアメ車はいきなりアクセルを踏み込んだのだろうか。
ブワン!と大爆音。
そして、ドラ声も聞こえた。
「どけえ!このガキども!」
その声とともに、アメ車は史の身体スレスレを猛スピードで走り去っていく。
史は、本当にぶつかる寸前だったようだ。
というか、少々、こすった感じ。
「ボタンが欠けた」
「愛華ちゃん、大丈夫?」
愛華に声をかけると、愛華も驚いた顔。
「うちは大丈夫や、それよりボタン・・・」
由紀と加奈子も史のまわりに
由紀
「ほんと、腹立つ」
加奈子は
「マジ、頭おかしいんちゃう?事故やで、これ」
加奈子も、本当に怒っている。
史は
「おそらく竜って人、また、音大の中で待ち構えているのかなあ」
少し嫌そうな顔。
かつて文句をつけられたことを、しっかり覚えているようだ。
由紀も
「なんか、行きたくなくなった」
不安な様子になった。
それでも内田先生と榊原先生との約束もある。
さすがに校門を目の前にして、引き返すのも、なかなかできない。
史は、愛華に頭を下げ、由紀、加奈子も一緒に、音大のキャンパスに入った。
それでもキャンパス内はいつもの通り。
広い芝生の上で、ホルンを吹いたり、フルートを吹いたり、ヴァイオリンを弾いている学生があちこちに。
愛華は
「うわーーーこれが音大?華やかなやなあ・・・」
さっきの驚きから、面白そうな顔に変わっている。
加奈子も
「うん、こういう所かあ・・・いいねえ、この雰囲気」
と、周囲をキョロキョロ、とても楽しそう顔になった。
史が、そんな二人の顔を、少々安心した顔で見ていると、由紀が史の脇をつついてきた。
史が「え?」と思って由紀に振り返ると
由紀が低い声で
「ねえ、史、あいつが・・・こっちに向かってくる」
史も、その「向かってくる、あいつ」の姿を確認した。
革ジャン、リーゼント、そして今日は少し赤ら顔の「竜」である。




