由紀の部長昇格(2)
「さてさて、いつも元気娘の由紀ちゃんの難敵って?」
洋子は、少し笑いながら由紀から聞き出そうとする。
「あのね、洋子さん、それは私だってたまには、悩みますって!」
「軟弱の史君ほどじゃないけれど」
由紀は史の文句を言いながら、ちょっと洋子に反発。
しかし、やはり話し出すと止まらない。
「あの史君にイジワルした音楽講師が、認めないんです」
「3月末で契約切れって言うのに、3月までは権限があるって言い張るんです」
「自分が推薦した生徒が落選したんだけど、あきらめない」
「何かにつけて私とか私に投票した仲間に攻撃的な態度をとるんです」
由紀の顔は、ますます難しい顔になった。
「それで、その攻撃的な態度って、具体的には?」
洋子は、由紀の言うことがイマイチ理解できない。
「はい、例えば練習中に、私とか私に投票した仲間を、ソロで歌わせるんです」
「それで、ちょっとでもリズムがずれたり、音程を外すと」
「全員の前で叱って、出来るまで何回でもやり直し、あまりのひどさに泣き出してしまう仲間もいるんです」
「それで、時間がかかってしまって、曲の練習も全く進まないんです」
由紀は、本当に悩んでいるようだ。
「・・・ほんと、史くんへの暴言といい」
「何も悪いことをしていない由紀ちゃんとかにまで」
「とにかくケチをつけたくてしょうがないのかな」
「音楽教師というより、人間として、男として・・・許せないなあ」
洋子も難しい顔になった。
「練習も毎日ですしね・・・あれじゃあ、合唱部をやめちゃう人もいますよ」
「私の友達が苦しんでいるのを救えないなんて」
由紀は、本当に困っている。
その目には涙が浮かんでいる。
悔し涙なのだろうか。
「そうなると・・・後は、マスターと涼子さんの出番かな」
洋子は何か思いついたようだ。
「え?」
由紀は、洋子の言葉の意味がわからない。
「大丈夫、私たちに任せて」
「その音楽講師を、立ち上がれない程、ギャフンと言わせてあげる」
洋子は、自信あり気に笑っている。




