カフェ・ルミエール店員紹介
事前予約客の顔ぶれを見ると、史の学園のクラス内の生徒や、史の事故原因を調査した柔道部、レスリング部、空手部、野球部の学生がほとんど、担任や教師も顔を見せている。
「事前予約客」全員が席に着くと、マスターが挨拶を始めた。
「ようこそ、カフェ・ルミエールに」
「今日から午前9時から、午後6時までは原則として喫茶部」
「午後6時からはお酒も出るバーラウンジとなります」
マスターは、そこで一旦、お辞儀をした。
「それから、喫茶部のチーフは、洋子さんにお願いをしました」
「皆さんもご存知の通り、パリのダロワイヨで修行したパテシィエで、いくつかの名誉ある賞も受賞されています」
マスターは、洋子に挨拶を促す。
洋子もにっこりと笑い、挨拶を始めた。
「はじめまして、洋子です、私の大恩人のお誘いで、このカフェ・ルミエールのチーフをお受けしました、いろいろ趣向を凝らした美味しいものをお出しできると思います、私も本当にワクワクです」
本当に色白にて美人、事前予約客は、ほぼ「うっとり見とれ状態」になっている。
「それから、アルバイトで洋子さんの後輩の料理学園の生徒さんが二人、手伝ってくれる」
「こちらが、結衣さん、そしてこちらが彩さん」
可愛らしい感じの二人が、にっこりと頭を下げる。
「ああ、それから、たまには俺も涼子も手伝う・・・けれど・・・みんなのお目当ては史君かな?」
マスターはそこまで言って、史を手招きする。
史は、少しうつむき加減で、挨拶をはじめた。
本当に緊張しているらしい、青い顔になっている。
「本当に、心配かけて、いろいろ・・・手を尽してくれて、みんなやマスターには、本当に感謝しています」
「まだ、少し足首は痛むけど、なるべく早く治して・・・学園に戻りたいです」
史は、ここで想いがこみあげてきたのか、言葉が出なくなってしまった。
涙もあふれてきている。
「がんばって!史君!」
「無理しないで、しっかり治して!」
「泣いてもいいから、ころんじゃだめ・・・」
どうやら、史のことが全員心配なようである。
「私、支える!」
同じクラスの里奈が、さっと立ち上がり、史の揺れる身体を支えた。
「ありがとう、大事なことを言っていなかった・・・日曜日には僕もアルバイトで珈琲淹れます」
史は、涙声になりながら、ようやく挨拶を終えた。
マスターも史の肩を支えた。
そして、マスターの明るい声が、カフェ・ルミエールに響き渡った。
「さあ、ここから、カフェ・ルミエール営業開始です!」
「ご注文をどうぞ!」