愛華の悩みと音大見学(3)
由紀のスマホには、まず加奈子から連絡が入った。
加奈子は
「なあ、愛華ちゃんが、史君の推薦入学する音大を見学したいと言うてな」
「史君と一緒に歩きたいと言うんや、それと都内散歩もしたいと」
「史君の彼女については、重々諭したんやけど愛華ちゃん全く引かないんや」
と、愛華の状態を、そのまま連絡する。
由紀は、少々ムッとしながら
「それを何とか収めるのが、加奈子ちゃんの役割でしょ?」
「だいたい史って、アホで無粋で、神経質なところがあってさ」
「そんなことになると、板挟みになってさ、すぐに胃が痛いとかさ」
「ほんと、イライラするくらいアホなんだから、悩んでばかりになるに決まってる」
と、難しいとの応えをする。
加奈子は
「でもな、それもうちも、ようわかる」
「史君がそういう性格っていうのも、ようわかる」
「でもな、由紀ちゃんとか史君もそうやけどな、愛華ちゃんとも、一生のお付き合いなんや」
「そうなるとな、なかなか冷たくもしきれないんや」
と必死に粘る。
由紀も、それを言われては仕方がない。
「わかった、お家の関係も確かに深いなあ」
「なかなかトラブルを起こすのも後々困るね」
「うん、仕方ない、そうなれば・・・愛華ちゃんの話は受けよう」
「もちろん、史には、私から重々言っておくし、クギをさしておく」
「私も付き合うよ、音大はともかく、都内散歩の場所は史と相談しておく」
由紀は、自分が付き添うということで、OKを出した。
加奈子は
「ほんま、助かったわ」
と、ホッとした顔で、通話を終えた。
そして、少しして、今度は愛華から由紀のスマホにコール
愛華
「いろいろと、ご心配ありがとうございます」
「音大散歩と都内見学楽しみにしています」
わりとキチンとした物言い。
由紀も
「はい、音大見学と都内散歩だよね」
「楽しみにしています」
「お口に合うようなお店も探しておきます」
と、由紀も「事務的な」口調。
すると愛華
「あの・・・レストランとしては、マスターのお店に行きたいんです」
「それから、予定は来週の土日」
「加奈子ちゃんと私は、大旦那のお屋敷に泊まります」
本当に明るい声で、スラスラと言ってくる。
由紀は
「う・・・仕事が早い・・・」
「うーん・・・こうなると」
「マスターにも洋子さんにも、因果を含めないと・・・」
と、いろいろと考えている。




