愛華の悩みと音大見学(2)
愛華は、ここで迷ってはいけないと思った。
加奈子に即座に
「史君が入学する予定の音大見学を史君と一緒にしたい」
「由紀ちゃんが変なことを言って反対すると困るから、加奈子ちゃんも一緒に行って」
と電話をかけた。
加奈子は、その電話に難儀した。
「そんなこと言われてもな、由紀ちゃんの耳に、どうせ入ってしまうんや」
「どんな文句言われるかわからんし」
「それに、何度も言うたやろ?史君にはしっかりとした彼女がおるって」
「愛華ちゃんの気持は、ようわかるけれどな」
「なかなか、難しいことになってもなあ」
「史君かて、困るんやないかなあ」
そう言って、愛華を懸命に諭すけれど、愛華は引かない。
愛華は
「そんなの今までは今までや」
「未来はこれからやないか」
「とにかくお願いや」
とまで言って
「加奈子ちゃんが、どうしても困るって言うんやったら」
愛華の声がそこで少し震えた。
「うち、史君に直接電話する」
声を震わせながら、言い切ってしまった。
その愛華の言葉で、加奈子は焦った。
「なあ、愛華ちゃん、そうなるとなあ・・・」
「小さい頃からのお付き合いやし」
「この後、将来も親戚付き合いやしなあ・・・」
「ここで揉め事もなあ」
と考えて、
「うん、わかった」
「あくまでも音大見学と都内散歩や」
「由紀ちゃんには私から、よう言っておく」
と、加奈子も気持を固めた。
その加奈子の言葉で、愛華はようやくホッとした。
「ありがとう、加奈子ちゃん」
「由紀ちゃんには、私からも話をする、言いたいことがあるしな」
「だってな、史君のお相手の話やろ?」
「それは、そもそも史君が決める話や」
「何で、お姉さんだからと言って、由紀ちゃんが口を出すんや」
「そこの所は、はっきり言わんとな」
愛華はホッとしたためなのか、途中から強い態度に変化している。




