京都での披露宴(1)
「一族」の新年会を兼ねたマスター一家の披露宴が始まる直前となった。
場所は、本邸の中の宴会室。
既に、「一族」の主だった者が、ほぼ百人、着席している。
本邸執事の吉川が、アナウンスを始めた。
「ご一族の皆様、本日は目出たい新年の集い、そして、それより何より、私たちの佳宏様が、美しい奥様と、また天使のように愛らしい祥子様と一緒に、戻ってこられました」
「ただいま、大旦那夫妻と一緒に入場なされます、拍手をもってお迎えしたいと思います」
その言葉に続いて、大旦那夫妻と、マスターの一家が入ってきた。
そして、単なる拍手ではない、一族全員が立ち上がっての大拍手になった。
拍手をする人の中には、この時点で感極まって泣き出している人が、本当に多い。
大旦那夫妻とマスター一家が正面の席に座ると、執事吉川は一旦、全員に着席を促した。
そして、再びアナウンスをする。
「それでは、まず、一族を代表いたしまして、大旦那から新年のご挨拶をいたします」
「そして、それに引き続きまして、佳宏様からのご挨拶がございます」
大旦那が立ち上がった。
マスター一家に軽く頭を下げ、正面を向いた。
そして、おもむろに、挨拶をはじめた。
「一族の皆様、新年、明けましておめでとうございます」
大旦那は、そこまで言って、しっかりと頭を下げる。
集まった一族も、それに合わせて、頭を下げた。
大旦那は頭を上げて挨拶を続ける。
「昨年中は、様々なことがありました」
「しかし、こうしてここに、みな健康、健勝を保ち、集まることができました」
「一族を代表して、この幸せに、心より感謝いたしております」
「それから何より、うれしいことがあります」
「皆様、すでにお気づきの通りであります」
「あの、長い間、姿を見せなくなり、本当に皆様がご心配をし、また寂しく思っていた佳宏君が、こうしてこの一族に戻ってきてくれたのです」
「そのうえ、涼子様と言う美しく賢く素晴らしい伴侶と、祥子ちゃんという本当に天使のように愛らしいお子様を連れて」
大旦那は、ここで、マスター一家に目配せ、マスター一家も立ち上がった。
再び、嵐のような拍手に包まれている。
史は拍手をしながら由紀にポツリ
「ねえ、マスターの顔が、引き締まっている」
由紀も
「うん、珍しくね、緊張しているのかな」
美智子も
「大丈夫だって、ホテルではいつもあんな顔」
晃はクスッと笑う。
「ああ、大旦那の話が長そうだから、面倒って思っているんじゃないかなあ」
晃の言うとおり、大旦那の話は、長くなりそうな気配を見せている。




