加奈子と由紀の電話相談
マスター、涼子、祥子の横浜のホテルでの披露宴も無事終了し、次は正月に京都で開かれる一族の集まりの中での披露宴になる。
これについては、マスターも過去の経緯も全て精算する決心を固めているし、涼子も「マスターについていくだけ」と、度胸を固めている。
そういうことなので、主役は全て問題はないけれど、由紀だけが悩み顔を続けている。
その原因は、加奈子からの電話だった。
「愛華ちゃんが史君に本気やから、そっちもその気で来ないと、あかんよ」
「いい?下手に断って、愛華ちゃんのメンツや心を壊すようなことだけは、しないでね」
「もうね、あのお家とも、相当長い数百年、いやもっとかもしれんおつきあいなんやから」
・・・・・・
とにかく、加奈子はクドクドと言ってくる。
由紀も
「そんなこと言われても、アホで無粋な史、ある意味マスターみたいに女は苦手なの」
「しゃれたこと一つも言えないんだから」
「加奈子ちゃんが愛華ちゃんに火をつけさせたんだから、そっちで始末をつけてよ」
と言い返すけれど
加奈子
「ああ・・・もう、無理や」
「うちかてな、里奈ちゃんが史君の大ピンチを、涙ぐましい献身で支えたとか」
「史君も、心から里奈ちゃんを信頼して、大事に思っているって何度も言い聞かせたんや」
「でも、愛華ちゃんは、絶対に引かないって言っている」
加奈子は、そこで声を少し低くした。
「それでな、由紀ちゃん」
由紀も、その低い声に
「え・・・何?まだ何かあるの?」
少し身震いする。
加奈子は言葉を続けた。
「あのな、愛華ちゃん、都内の大学に進学するって言ってた」
由紀は、身体が震えた。
「・・・マジ?」
その由紀に加奈子
「大旦那の家に下宿するかもしれん」
「とにかく史君の家の近くに住むって言い張ってる」
「つまりな、里奈ちゃんって女の子が、史君にそういうことが出来たのは、近くに住んでいたからであって、自分だって近くに住んでいれば必ず同じことをやった」
「だから、そんなことは、諦める理由にはならない」
「とにかく史君のそばに行きたい、それだけって言い張るの」
由紀は、またしても悩み顔。
「うーん・・・愛華ちゃんを甘く見ていた」
「確かに思い込んだら、本当に強い」
「どうしたらいいのか、わからなくなった」
加奈子は
「もうね、史君に決めさせたら?」
「私たち、どうにもならん」
「お手上げや・・・」
「京都で待ってる」
そこで、電話を切ってしまった。
由紀は、モヤモヤがつのった。
「うーん・・・史をポカリしても意味ないしなあ・・・」
「いざとなれば、ひ弱な史を体調不良で欠席もあるけれど」
「マスターたちの披露宴で、しかも一族の集まりでとても無理」
「といって、史に責任があるわけでもなし・・・」
由紀は、本当に悩んでいる。




