披露宴(3)晃一家とも対面、マスターの苦笑い
晃の一家も、涼子の両親の前に立った。
晃が代表して、挨拶をする。
「本日は、心よりお祝い申し上げます」
「末永いお幸せをお祈りいたします」
涼子の父も
「いえいえ、こちらこそ、今後も末永く」
涼子の母は
「晃さんがいろいろと動いてくれて、本当にありがとうございます」
「本当に助かりました」
また涙ぐんでいる。
晃が父でもある大旦那にそっと小声で何かを告げると、
大旦那は少し驚いて、また頭を下げる。
「まさか、ご両親が教師をなさっておられて、お母様は晃の英語を受けもたれたとか、つい知らず失礼いたしました」
涼子の母は
「はい、可愛くて真面目な生徒さんでしたよ」
「それがこれほど立派になられて」
と、うれしそうな顔になる。
晃は
「いえいえ、私も涼子さんの心遣いで、美智子と結ばれたのですから」
「これは恩返しなんです」
柔らかく笑っている。
さて、大人たちが様々談笑をしていると、祥子が泣き出した。
すると、美智子がさっと祥子を抱く。
そして涼子に
「式の最中、泣いたら私が面倒を見ます」
涼子は、また涙ぐんでしまう。
そんな幸せな会話が続いていると、ホテルの婚礼担当が再び顔を出した。
「それでは、そろそろ、ご準備を」
と深く頭を下げる。
マスターは
「では・・・少し緊張するなあ」
と頭をかく。
そんなマスターに全員が笑いながら歩きだすと、史がマスターに声をかけた。
「マスター、あれ、お願いしますね」
するとマスターは
「え?マジ?」
と少し引く。
由紀もマスターに声をかけた。
「だめ!絶対お願いします!」
少し強い口調になっている。
マスターはまた苦笑い。
「しょうがねえなあ・・・このホテルであれかい?」
「後輩どもに何て言われるかなあ」
そのマスターの言葉に、美智子と涼子は、口を抑えて笑っている。




