史の回復
史は、クリスマスコンサートの当日に風邪を引き、三日ほど寝込んだあと、回復の兆しを見せ始めた。
食べ物も、ほとんど受け付けず、少量の塩味だけのおかゆを摂取しただけ。
カロリーで言えば、一日五百キロカロリー程度だろうか。
史本人が言うのに
「のども痛い、飲み込む時に痛い」
「目が回るから起きるのも大変」
「胃が痛いので、食欲もない」
だったので、三日で、五キロぐらいは体重が落ちた。
それでも、今日の朝は起きてきて、母美智子特製のミルク粥を食べている。
そのミルク粥に、由紀は注目した。
「史、全く子供、体調を崩すと、いつも母さんのミルク粥」
「どうしてそんなにひ弱なの?」
ついつい、追求気味の口調である。
史は、そんなことを言われても言い返す体力も気力もない。
黙って食べている。
それでも母美智子は
「しかたないよ、まずは回復が大事」
と史をなぐさめ、由紀には
「由紀、わかっているよね、史が体調が悪いんだから、史の分まで家事をしなさい」
「いい?由紀がサボっている時は、史が由紀の分を全部カバーしたんだから」
「史のほうが、洗濯物のたたみ方とか、アイロンは上手だよ」
・・・小言が続くので、由紀はゲンナリである。
それでも朝食が終わり、史が立ち上がった。
少しよろけたので、由紀が支えた。
史は、恥ずかしそうな顔。
「姉貴、大丈夫だって」
由紀の腕をほどこうとする。
しかし由紀は、
「あのさ、とにかく直して、早く」
「マスターも涼子さんも、心配している」
「史が寝込んでいる間に、里奈ちゃんからも心配のメールが来たよ」
「だから、もう一度寝なさい」
腕をほどこうとはしない。
ほぼ強引に、二階の史の部屋まで引っ張っていき、また寝かしつけた。
その後、リビングに戻ってきた由紀は、母美智子に
「史は、コロンと寝ちゃった」
美智子は
「うん、まだまだだね、よほどひどい風邪だ」
「マスターの披露宴までには回復させないと」
と腕を組む。
由紀
「うーん・・・あと一週間・・・」
「その後は、もっと寒さがきつい京都・・・」
美智子と由紀は、本当に不安になっている。




