マスターと由紀の横浜デート(2)
由紀は、マスターに説明をはじめた。
「あのね、少し前にね、史が京都の雅仁さんの家で、加奈子ちゃんと演奏したの」
マスターは、
「ああ、少し聞いたけれど、それが何か?」
まだ意味がわからない様子。
由紀は
「それでね、簡単に言ってしまうと、愛華ちゃんが史のことを、好きになってしまったらしいの」
「加奈子ちゃんに聞いたら、何が何でも、史をゲットするって言い張っているらしい」
マスターは、そこでため息。
「だって、史君には里奈ちゃんがいるでしょ?相思相愛だよ」
「史君のような繊細な子には、里奈ちゃんのようなしっかりとした子がいいと思う」
「カフェ・ルミエールの女の子たちも、付け入るスキがないって」
由紀は、首を横に振る。
「私ね、加奈子ちゃんに、史と里奈ちゃんの関係を話したし、それを加奈子ちゃんから愛華ちゃんにも伝えてもらったの」
マスターは
「うん、それで?」
と聞き返す。
由紀は、話を続ける。
「でもね、それを聞いた愛華ちゃんが、そんなのは関係ない」
「私は、史君がすごく小さな時から、史君のことが好きだったって言い張るらしい」
「愛華ちゃんってね、思い込むと、とにかく頑固だしね」
「それにね、史の性格ってね、ビシっと言えないでしょ?弱虫だから」
「まあ、愛華ちゃんに迫られて、オロオロするのが関の山」
マスターも事情はわかったようだ。
また、ため息をついて
「まあ、あの雅仁さんの御家柄と、わが一族の縁は深いしねえ・・・」
「歴史も縁も深い」
「愛華ちゃんはいい子なんだけど、確かに思い込みは強いかな」
「雅仁さんも、史のことがお気に入りだしね」
「うーん・・・迫られると、難しいかなあ」
「でも、そうかといって、史のことは、披露宴の華だしなあ」
と、いろいろ考えている。
そんなことを話しているうちに、BMWは横浜山下公園前の直線道路に入った。
お目当ての一つ、ニューグランドホテルが見えてきている。




