奥様の直感
里奈は、史の前まで走ってきて赤い顔になる。
「わ、お父様もお母様も、お姉様も・・・ステージで挨拶をした立派な人と奥様かな、それからすごく可愛い女の子」
史が里奈に、
「うん、僕の家族はわかるよね、それからこの二人は僕の祖父母、この女の子はいとこの加奈子ちゃん」
と紹介して、今度は里奈を紹介する。
「この女の子は、里奈ちゃん、僕の学園の同級生」
「怪我をした時から、本当にお世話になって」
と言うと、里奈がキチンと頭を下げ、自己紹介をする。
「里奈です」
「今後とも、よろしくお願いいたします」
その里奈に大旦那が、声をかけた。
「うんうん、里奈さんの話は、晃からも美智子さんからも、マスターからもよく聞いています」
「本当に、史が一番困っている時に、しっかりと支えてくれた」
「私たちも、本当に感謝しています」
「里奈さんがいなかったら、史がどうなったことか」
「感謝しても、しきれないほどです」
そこまで言って、大旦那は里奈に頭を深く下げた。
大旦那は言葉を続けた。
「これからも、史のことをよろしくお願いします」
「本当に、素晴らしい娘さんだ」
大旦那は里奈の顔を見て、ニッコリとする。
里奈の顔は、ますます真っ赤になった。
そんな里奈を、じっと見ていた奥様からも声がかかった。
「ねえ、本当に真面目で可愛らしい」
「史には、ピッタリです」
奥様はそのまま歩いて、何故か里奈の前に立った。
そして里奈に
「ねえ、里奈さん、もしかして・・・」
と、言い始めた。
里奈はキョトンとして、よくわからない様子。
奥様は、里奈に尋ねた。
「里奈さんの名前で、少し思い当たることがあってね」
「おばあさんの名前は、佳子さんって言うんじゃないの?」
奥様から、それを聞いた里奈
「え?その通りです!」
「どうして?祖母の名前を?」
と、目を丸くする。
奥様は、本当にうれしそうな顔になった。
「あらあら、本当にうれしい、実は女学校の同級生なのよ、本当に仲良しで」
「二、三日前も佳子さんと、お電話したばかりで」
「ここのコンサートの話が出て、里奈さんのお名前が出たの」
「だから、私も少し感づいてね、由紀と史のお話をしたの」
奥様から、思いがけない話が続く。
そして奥様が
「いやーーー懐かしい、今はどちらに?いらしているんでしょ?」
と里奈に尋ねると
里奈
「あ・・・はい・・・私と一緒に、はい、両親も」
と素直に応える。
その里奈の言葉で、史が走った。
里奈の両親と、その祖母佳子の姿を見つけたようだ。




