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カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
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三人に拉致される史

史は第九の第一楽章を振り終わった。

本来の指揮者の榊原は、ステージに昇っていく。

史は、すぐに指揮台をおりて、今度は榊原が指揮台にあがった。

榊原自身が、あちこち各パートに直接指示をするようだ。


榊原は、指揮台をおりた史に

「ありがとう、いい指揮だった」

と史に声をかけると、史はキチンと頭を下げる。

そして、史は、楽団からも、大きな拍手を受けて、ステージを下りてきた。


洋子はステージを下りてきた史に声をかける。

「史君、かっこよかった」

「すごいねえ、第九の指揮なんて」


史は

「あ、いえ、楽譜の通りに振っているだけです」

「たいしたことではありません」

いつもの優しい顔で、微笑んでいる。


奈津美からも声がかかった。

「ねえ、史君、楽譜通りって言ったけれど、すごいよ、感動しちゃった」

結衣も感激している。

「うん、素晴らしい、史君が振ってもいいかも」

彩も頷いた。

「榊原先生の第九もドッシリとしていいけれどねえ、史君のは華やかな感じがする」


そんな「お褒めの言葉」を聞いた史、少し顔を赤らめて

「あの、バッハの演奏もあるので」

「第九は、あくまでも練習指揮者です」

「全部の楽章を振ったら、かなり疲れます」

と、謙虚な反応である。


洋子は史に質問をした。

「ねえ、史君、この後の史君の出番はあるの?」

つまり、今日の練習で史が何か演奏することがあるかないかの質問である。


聞かれた史

「あ、後でアンコールの打ち合わせをするので、演奏はありません」

「ここで聞いているだけです」

と素直に答えた。


すると、奈津美、結衣、彩の三人は、サッと目配せをお互いにして

まず奈津美

「史君、お腹減っていない?」

結衣も追い打ち

「軽いものでも食べない?」

彩は

「ね、寒くなるから温かいものでも」

と、史を誘う。


史は

「えーっと・・・そういえば、そうですね」

「することないと言えば、そうかなあ」

と、特に反論もない。


洋子は

「え?」となっているけれど、奈津美、結衣、彩は全く動きに無駄がない。


奈津美

「じゃあ、何か食べに行こう!」

と言って、サッと史の手を握る。

結衣は

「うん、何か食べたいものある?」

「ここで迷わない!まずホールを出よう」


結局、史は無抵抗、スンナリと地下ホールを三人と出ていってしまった。


残されてしまった洋子は、ムッとしている。

「何?あの子たち・・・あれじゃあ史君を拉致しているってことだよ」

「私というものがありながら・・・」


しかし、その後気になったことがある。

「うわ!由紀ちゃんが、怒った顔をしている」

「後で史君、由紀ちゃんに叱られそう・・・」

置いてきぼりされたことよりも、その方が気になっている。


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